米F5は、「2021年版アプリケーション戦略レポート」を発表した。この調査は毎年実施され、今回で7回目となる。今回の調査では、意思決定権をもつ専門的な職種に限定して調査し、1,544名(アジア太平洋地域が大半)が回答した。回答者は通常の半分程度になっているという。
この調査でどのようなことが分かったのか、日本と世界で違いがあるのか、F5 アジア太平洋地域 中国、日本担当 上級エバンジェリスト 野崎 馨一郎氏に聞いた。
野崎氏は、今回の調査の特徴として、クラウドシフトが進みSaaS型アプリの利用の優先度が上がっているほか、Edge利用の広がりという2つがあるとした。
DXがアプリケーション基盤に与える影響の質問では、史上初めて、アジャイル開発の導入、高頻度のアプリリリースがグローバルの平均を上回ったという。
一方、自動化・オーケストレーション、アプリのモダナイズという項目はかなりグローバル平均を下まわり、野崎氏は「かなりアンバランスな結果になっているのは興味深い点。おそらく、アジャイルの環境をとりあえず入れてみました、試してみましたという状況で、完全に自動化には至っていないためこういう回答になったのではないか」と語った。
アプリケーションのモダナイズは、一般に広義にとらえられており、今回の調査では、リファクタリング(機能は変えずに構造を変える)、API連携の強化、マイクロサービス化に絞って調査したという。
アプリ基盤技術がデプロイされる環境については、史上初めて、パプリッククラウドにデプロイしたという回答がグローバル平均を超えた。
「他の項目があまり変わらないのに、ここだけ伸びているのは、今回、回答者の属性を意思決定者に絞った点と、コロナ禍で急いで環境を整えた結果、導入しやすいクラウドを選択したのではないかと推測できる」(野崎氏)
今回の調査の特徴でもあるEdgeについて同氏は、「Edgeはわれわれの予想以上に使われている。Edgeはここ1、2年、これまでと違う文脈で拡大された定義で使われている。集中的なアプリケーションのコンピューティング環境であるデータセンターやパブリッククラウドとユーザーの中間点で、一部のアプリを実行することで、パフォーマンス改善などいろいろなメリットが得られるというのがEdgeのキーワード。日本を含め、中国、台湾、韓国などのアジアの国でIoTをユースケースに挙げることが多かった。これは、製造業が多いためではないかと予測している」と説明した。
AI/MLの導入については、日本は世界平均に比べ1年程度遅れており、2022年またはそれ以降という回答が一番多かったという。
野崎氏はこの点ついて、「自動化・ AI/ 機械学習により、情シス部門の人的・時間的リソースをデジタル化にシフトできるかが鍵」と語った。