市場調査会社のTrendForceによると、DRAM市場は価格上昇サイクルに入っており、さまざまな種類のDRAM製品の平均契約価格は、2021年第1四半期に前四半期比3〜8%上昇したが、第2四半期も同13〜18%の上昇とさらに高騰する見通しだという。
これは、同四半期に向け、さまざまな最終製品の出荷がかなり堅調に推移すると予想されることに加え、データセンター分野からの大規模調達が再開されることが期待されるからである。こうした動きに対し、さまざまなアプリケーション分野でDRAMを必要とするメーカー各社は、値上げ前の備蓄を迫られているという。
特にPC DRAMの契約価格は、強気のノートPC市場に牽引されたノートPCメーカーからの需要急増に伴い、前四半期比で13〜18%上昇すると予測されている。
ノートPCの生産は全体として、21年第2四半期もかなり健全な勢いを維持する見込みで、PCメーカー各社も年間生産目標の引き上げを図っているとTrendForceでは説明しており、この結果、PC DRAM需要も増加するとしている。
PC DRAM製品の購入メーカー各社は現在、比較的低レベルの在庫(約4〜5週間)を抱えるのみであり、DRAM価格が近いうちに上昇するという予測から、DRAMの調達活動をさらに強化している模様である。
一方の供給に関しては、3大DRAMサプライヤともにビット出荷数量を高める動きに消極的であるという。また、DRAM全体で見たPC DRAMの生産能力割合は、他のアプリケーションセグメントの需要を受け、将来的に圧迫される可能性があるともしている。例えば、一部のスマートフォンメーカーは、メモリコンポーネントを積極的な買いだめを続けているほか、サーバDRAMの需要も2021年第2四半期に急増すると予想されているためで、こうした動きを踏まえ、TrendForceでは同四半期のPC DRAMの契約価格について、前四半期比13〜18%の上昇と予測している。
PC DRAM以外の価格も軒並み上昇の可能性
第2四半期は伝統的にサーバ出荷のピークシーズンであるため、サーバDRAMも需要が増加する。そのためTrendForceでもサーバDRAMの購入者が、同四半期中に在庫の積み増しならびに、月次ベースでの調達数量の増加に取り組むとみており、これにより、サーバDRAM価格も上昇傾向が維持されるとしており、DRAMサプライヤ各社がサーバDRAMの比率を高めても、同四半期におけるサーバDRAMの契約価格は同約20%の上昇となる可能性があると見ている。
モバイルDRAMの需要に関しても、ファウンドリ市場の生産能力の逼迫により安定した部品供給の維持に警戒が強まっているため、スマートフォン(スマホ)メーカー各社ともに同四半期の在庫構築の取り組みを緩和しない見込みだという。
同四半期のスマホの総生産台数は3億台を超えると予測される一方、大手DRAMサプライヤ3社ともに高値販売が見込めるサーバDRAMを中心に製品を構成されるものとみられることも、こうした在庫調達の動きを加速させるものと見られており、その結果、同四半期におけるモバイルDRAMの契約価格は同10~15%の上昇(eMCPは同5~10%の上昇)と見ている。
グラフィックスDRAMは、従来のPCグラフィックスに加え、ゲーム機、そして仮想通貨のマイニングでの需要が増加する一方で、大手DRAMサプライヤ3社ともにその生産能力をGDDR5からGDDR6へと移行を進めており、GDDR5が不足する一方、GDDR6も仮想通貨のマイニング用途が需要を後押ししており、TrendForceでは、仮想通貨の価値が大幅に変化しない限り、非常に緊張した供給状況が続く、との見方を示しており、その結果、契約価格も同約10~15%の上昇となると予測している。
そして民生向けDRAMだが、新型コロナの影響による外出禁止令などの影響から、テレビ、セットトップボックス、ネットワーク機器などの需要が堅調で、加えて5Gインフラの構築とWi-Fi 6への移行も需要を高める要因となっており、需給に対するギャップが2021年第1四半期でも生じているが、第2四半期にはさらに拡大する可能性があると指摘しており、その結果、民生用DRAMの同四半期における契約価格はDDR3で同約15~20%の上昇(DDR4で同約13~18%の上昇)と予測しているが、需給のギャップが拡大すれば、さらなる値上げの可能性もあると見ている。