ルネサス エレクトロニクスの生産子会社であるルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング那珂工場の300mmウェハライン(N3棟1階)で起きた火災について、半導体市場調査会社のTrendForceは、一部の付帯設備の焼損と煤で汚染されたクリーンルームの復元と、新たな製造装置の入手・設置・立ち上げというタスクには、同社が願望を込めて語っている1か月以内というのは難しく、控えめに見積もっても3か月はかかるとの見解を発表した。

  • ルネサス那珂工場
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  • ルネサス那珂工場N3棟の火災現場の様子。多数の装置が激しく焼損しているほか、天井の空調フィルタは焼け落ち、FOUP自動搬送レールも焼損してクリーンルーム全体が煤で汚染しているのがわかる (出所:ルネサス発表資料)

ルネサス那珂工場のN3棟では、300mmウェハを用いて主に90nmプロセスを用いて半導体製品を製造。車載関連では、PMIC、V850マイコン、第1世代R-Carなどが含まれており、それらの製造が停止することとなったとTrendForceでは分析している。

また、半導体生産ラインの復旧作業は、後の製造上のリスクを回避するために、細心の注意を払って進める必要があるため、同生産ラインの主力である自動車向けマイコンの供給不足が今後、世界規模でさらに悪化する可能性があるとTrendForceでは指摘しているほか、製造されていた製品の2/3は別工場、主にこれまで製造委託をしてきたTSMCで製造することが技術的には可能だとしているが、ファウンドリ業界全体で現状、フル生産の状況が続いており、ルネサスの供給不足を補うために生産能力を割り当てることも困難であるともしている。

2020年の車載半導体サプライヤ売上高ランキングを見ると、ルネサスは3位の位置づけで、このほか、NXP Semiconductors、Infineon Technologies、Texas Instruments、STMicroelectronics、Microchip Technologyなどが車載マイコンサプライヤとして知られている。このうち、STMicroelectronicsは車載マイコンのほとんどを自社製造で賄っているが、同社も車載半導体が不足気味となっており、ルネサスがSTを含む競合他社に製造を委託することも困難であるとTrendForceでは見ている。

なお、2021年2月に米国テキサス州を襲った異常寒波による大規模停電の影響で、州都オースチンにあるInfineonやNXPの車載半導体工場が一時操業停止に陥った。停電自体は事前に電力会社から通告があったため、ウェハの破損や装置の損傷が生じることもなかったとされているが、1か月たっても再稼働ができておらず、Infineonではフル稼働に戻るまで数か月を要するとしている。