Intelの新たなCEOであるPat Gelsinger氏は3月23日(米国時間)、「Intel Unleashed:Engineering The Future」という銘打ったオンラインプレゼンテーションを行い、Intelの新たなIDMとしての再出発である「IDM 2.0」の方針と戦略を明らかにした。

Intel Unleashed: Engineering the Future (Event Replay)

それらを要約すると、

  • 米国アリゾナ州に200億ドルを投じて2つの新しいファブを建設することを決定したほか、米国、欧州、およびその他の地域で生産能力向上のための投資を年内にも行い、世界中の需要増加に応える。
  • EUVを多用してプロセスを簡略化することで7nmプロセス開発は社内で順調に進んでいる。今後ともIntel内での製造を主体とし、外部ファウンドリへの製造委託も拡大して増産体制を敷く。
  • 7nmクライアントCPU(「Meteor Lake」、開発コード名)用の次世代チップレットは、2021年第2四半期に設計を終了しテープアウトする。
  • Intelは世界中の顧客を対象に本格的にファウンドリサービスに参入し、独立した事業としてIntel Foundry Service(IFS)を始める。
  • 半導体研究に関してIBMとパートナーシップを結び、研究開発力を強化する。
  • 2021年10月に装いも新たにイノベーションイベントとして「Intel Developer Forum(IDF)」をサンフランシスコで開催する。

IFSについてGelsinger氏は、Intelの最先端プロセステクノロジーとパッケージングの組み合わせ、米国と欧州での確固たる生産能力、x86コア、ArmおよびRISC-Vエコシステムを含む、顧客向けの世界クラスのIPポートフォリオにより、他のファウンドリとは差別化できると主張している。

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    「Intel Unleashed:Engineering The Future」にてEMIBとFoveros 3Dを用いて製造されるIntel Xe GPU「Ponte Vecchio」を手にするPat Gelsinger氏 (C)Walden Kirsch/Intel Corporation

また、今回の発表には米国のアリゾナ州知事と商務省長官が招かれており、アリゾナ州、およびバイデン政権と手を携えてこのような国内向け投資を行えることを喜びとすると語り、3000人を超すハイテク人材の雇用に加え、新工場建設に伴い地元を中心に約15000人の雇用が生まれることを強調した。

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    Intelの最新ファブであるアリゾナ州チャンドラのFab42 (C)Intel Corporation

なお、今回の発表の詳細は後日追って文書で発表することになっている模様である。

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    今回のイベントのまとめ (出所:Intel発表資料より抜粋)

米国のトランプ前政権は、国家安全保障上の理由から、Intelはじめ国内外の半導体メーカーに対して米国内に最先端プロセスを用いた半導体工場(ファウンドリ)の建設をかねてより要請していたが、近年のIntelは量産プロセスがうまく立ち上がらず、新工場建設どころではなかったため、長らく米国政府の要求に沈黙してきた。しかし、製造重視の新たなCEOを迎えることで、やっと米国内に工場の増設を決めたようだ。すでに、TSMCが要請にこたえて同じアリゾナ州に工場建設を決めているほか、Samsungも米国内に新たなファブの建設を検討中で間もなく正式に発表するといううわさもあるが、今回のIntelの発表を受け、今後の成り行きが注目される。TSMCは、国防総省がらみの軍事用チップ主体の工場を想定していたはずだったが、国家安全保安上で優位に立つであろう米国資本のIntelの参入でTSMCの戦略が米国ファブレス向け商用チップの生産を主体にする可能性もある。そのため、TSMCはアリゾナに将来的に6棟のファブを建設する予定があると米国赴任予定の従業員に語ったとされるが、正式な発表ではないため、その真偽は不明である。