日立製作所(日立)は3月22日、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するため、多様な人材と、顧客やパートナー、スタートアップ企業など業界を越えたステークホルダーをバーチャルとリアルでつなぎ、知恵やアイデアを掛け合わせることで価値創出を活性化する場として「Lumada Innovation Hub Tokyo」を4月15日に開設すると発表した。場所は東京駅直結のサピアタワー17階。

  • 「Lumada Innovation Hub Tokyo」入り口

「Lumada」は、データから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立のデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。Lumada事業における2020年度の売上は、前年比6%増の1兆1000億円にのぼる見通しで成長を続けている。また同社が2020年11月に発表した、多様なパートナーとのエコシステムを構築する「Lumadaアライアンスプログラム」には、2021年3月22日現在、日本マイクロソフトや、SONY、富士フイルムをはじめとした35社が賛同している。

  • 「Lumadaアライアンスプログラム」賛同企業一覧

そこで今回、日立は、Afterコロナを見据えたニューノーマル社会でのイノベーション創出のあり方を「業界・空間・時間を超え、知恵やアイデアをつなぐ」ことと再定義し、その実現に向けたサービス・協創空間を「Lumada Innovation Hub」として体系化する。「Lumada Innovation Hub Tokyo」は、そのフラッグシップ拠点として開設される。

  • 「Lumada Innovation Hub Tokyo」概要イメージ

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22日に開催された記者会見の冒頭で、日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット CLBO(Chief Lumada Business Officer)の熊崎裕之氏は、「Lumada Innovation Hub Tokyoは、社会課題の解決に取り組む協創活動のハブとして役立つために、多様な分野のスペシャリストと直接対話し、ワークショップやプロタイピングを通して、アイデアを形にしていく場所だ」と、説明した。

「Lumada Innovation Hub Tokyo」は、オンラインでも利用可能な5つの協創空間を提供する。先進事例の把握や交流を深める「Meet-Up Square」、日立のさまざまなソリューションの体感を提供する「DX Gallery」、協創ワークショップを行う「Co-Creation Studio」、その場でプロトタイピングや検証が行える「Mirai Atelier」、事業具体化の議論を進める「Incubation Base」の5つの空間を提供し、ビジョン構築からビジネス化までの協創プロセスの支援に繋げるとしている。

  • Incubation Base

  • Meet-Up Square

  • DX Gallery

  • Co-Creation Studio

  • Mirai Atelier

これらの協創空間では、日立がコロナ禍において試行し培ってきたビジョン構築やアイデア創出などの協創プロセスのデジタル化のノウハウを駆使し、対面的に議論するリアルだけでなく、バーチャルを組み合わせたハイブリッドな環境を提供する。

例えば、日立グループ拠点やLumadaアライアンスプログラム参加パートナーのDXの現場をつなぎ、バーチャル工場見学や実証実験へのリモート参加を実現するなど、具体的な議論を可能にし、迅速に協創を進めることを目指す。

また、「Lumada Innovation Hub Tokyo」の下のフロア(16階)は、日立のオフィスになっており、2021年の半ばを目途に、データサイエンティストやデザインシンカーなど、デジタル人材を約100名在籍させる予定だという。「さまざまな場所・人をつなぐハブ」というコンセプトのもと、制御・運用の技術者や、働き方改革の推進者などが、素早く直接つながる環境を構築するとしている。

さらに日立は、このような取り組みを牽引していくリーダーとして、シナモンAI 取締役会長兼CSDO(元アクセンチュア チーフマーケティングイノベーター)の加治慶光氏、圓窓 代表取締役の澤円氏(元日本マイクロソフト業務執行役員)の2名を社外から招聘した。

  • 左から日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット CLBO 熊崎裕之氏、圓窓 代表取締役 澤円氏、シナモンAI 取締役会長兼CSDO 加治慶光氏

熊崎氏は、「社会イノベーションを起こすうえでは、技術だけでなく、人のハブが必要不可欠だ。社内外を問わない人のつながりを促進していくためには、まずは日立と仮想的距離が遠い人材を招き、化学反応を起こしたいと思った」と、両名を招聘した背景を語った。

加治氏は、センター長として「Lumada Innovation Hub」の運営や、コンサルティングサービスの提供、人材育成をリードし、澤氏は、Lumadaのエバンジェリストとして、Lumada関連施策について社外に向けた発信を索引していく。

澤氏は、「デジタルが社会のインフラになっている昨今においては、新たになにかを作る必要はなく、今あるものを工夫して使い、組み合わせることで社会課題は解決できる。自分とこのハブの役割は、さまざまアイデアを持つ人々を統合していくこと。そのためには、技術面だでなく、マインドセットのアップデートが一番重要だ」と、意気込みを見せた。

日立は今後、「Lumada Innovation Hub」のコンセプトに則した協創空間を国内外へと展開を進め、グローバルなパートナーとのイノベーション創出も目指す方針だ。