中国のファウンドリ大手SMICは、広東省深圳市地方政府から資金提供を受ける形で、同市との合弁事業として23億5000万ドルを投じ、新たな半導体工場を建設することが中国の証券取引所への届け出により明らかになったと、Bloombergなど複数の海外メディアが報じている。
新工場の出資比率はSMICが55%、深圳市が最大23%で、残りは投資家から調達するという。また、その生産能力は月産4万枚の予定で、2022年の稼働を目指しているという。
米国商務省は、Applied Materials(AMAT)やLam Researchなどといった米国半導体製造装置メーカーに対し、10nmプロセス以下の半導体を製造できる半導体製造装置のSMICへの出荷を禁止しているが、今回SMICが計画している新工場は28nmプロセス以上のレガシープロセスを用いた半導体を製造するためのものとしており、米国政府が現状の方針を変更しないかぎり、米国装置メーカーからの製造装置購入に制約を受けない見込みである。
中国政府は2021年より始まる新5カ年計画において、半導体を戦略的科学技術分野として自給自足に向けて投資を拡充する方針を表明しているが、今回のSMICの新工場建設は、この方針に沿ったものとみられる。
中国政府は国内のみで半導体のサプライチェーンを完結させることを目指しているため、エッチング装置をはじめ国内企業から調達できる製造装置が優先して導入されるものとみられるが、主要装置のほとんどは米国や日本、オランダから調達せざるを得ないのが実情である。
SMICは2021年3月時点で上海、北京に300mmファブ、上海、天津、深圳に200mmファブを所有し、その合計生産能力は200mmウェハ換算で月産52万枚となっているが、これら既存工場についても年内の増産を計画しているという。同社は、2020年の売上高が前年比で25%増と、純利益も同約3倍増と、ほかのファウンドリ企業同様好調で、2021年第1四半期の売上高も前年同期比で17%を超す成長率が期待されるなど、米国政府の制裁の影響は感じられない。こうした好調の後押しもあり、SMICは制裁が解除されるまでは、先端プロセスを用いた半導体の製造を諦め、車載半導体を中心に需要が伸びているレガシープロセスでの半導体製造に徹することで、事業を維持しようとしている模様である。