ソフトバンクとニコンは3月18日、光無線通信技術の新たな利用シーンの創出を目的に、ニコンの有するAI技術、画像処理技術、精密制御技術などを活用して2台の通信機が100mの距離をとった状態において、互いにさまざまな動きをしつつも双方向で追尾することで、情報のやり取りが途切れない「トラッキング光無線通信技術」に成功したことを明らかにした。
従来、光通信は通信機同士の向きがずれると、光を受光できずに通信が途切れてしまうという課題があった。今回はソフトバンク提供の光無線通信モジュールを搭載した独自のマーカー的役割を持つプレートをターゲットデザインとして配した通信機を開発。通信モジュールの下に設置された光学カメラで対象通信機を捉えることで、位置把握を可能としたという。
具体的には、同社が提供している大規模空間で非接触三次元の自動測定が可能な装置「Laser Radar」のハードウェア制御技術を応用する形で、モデルベースをもとにした制御に加え、AI(ディープラーニング)を用いて、相手を認識して、ジンバルの角度制御などを行う仕組みを採用。さらにアルゴリズムのスリム化も図ることで、高い認識率と計算速度の向上を実現し、30fpsで画像処理を完了させ、制御できるようにしたという。
また、距離別に加え、ぼけた画像や暗い場所での画像、撮像イメージの中心から外れた画像なども学習させることで、冗長性の向上も図ることなども行っており、こうした技術を活用することで、カメラと光通信機のオフセットロール偏差を吸収する正対制御を実現したとするほか、通信光軸の相対アライメント誤差≦±0.5(deg)を実現したとする。
開発を担当したニコンでは、通信モジュールから発せられるLED光(仕様:通信距離100m、通信速度100Mbps)のスペック上限の状況でも相手を認識し、制御できることを確認したとしており、将来的なターゲットである1kmで1Gbpsの伝送を達成するための礎ができたとしている。
ちなみに、開発に関わったスタッフの中には同社の半導体やFPD露光装置に携わってきたものも多いとのことで、これまで同社がそうしたハイテク分野で培ってきたさまざまなノウハウが通信機には盛り込まれた形となっている模様である。
なお、ソフトバンクとニコンでは、今後も実用化に向けた協業を続けていくとしており、画像認識によるジンバルを用いたユースケースとして2022年ころに無線給電の実現を検討しているとするほか、光無線通信そのものについても2025年の実用化を目指すとしており、今後、装置の小型化、低価格化、軽量化を進めるほか、レーザーやLiDARなどとのセンサフュージョンを活用した長距離送受信などの実現に向けて開発を行っていくとしている。