日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(ITR)は3月18日、「企業IT利活用動向調査2021」を発表した。これによると、電子契約の利用企業は2020年7月時点の41.5%から2021年1月の時点では67.2%へと増加し、経営課題としては、業務プロセスの効率化、働き方改革、情報セキュリティの強化が上位を占めるが比率は減少傾向にあることが分かった。

  • 電子契約の利用状況 引用:「企業IT利活用動向調査2021」

同調査は両者が、1月13日から15日にかけて、ITRの独自パネルに対するWebアンケート形式で実施したもの。従業員数50人以上の国内企業に勤務しIT戦略策定または情報セキュリティ施策に関わる課長職相当職以上の役職者約9000人に回答を呼びかけ、981人の有効回答を得たという。

電子契約の利用状況を見ると、2020年7月に実施した前回調査の41.5%から、67.2%へ拡大した。今後の予定を含めると、8割強が電子契約を利用する見込みだ。利用している電子署名は、電子契約サービス事業者のものが契約当事者のものを上回っている。

セキュリティインシデントに関して、経験していない企業は2020年1月の28.2%から24.2%へ減少し、インシデントが増加したと同社は見ている。過去の調査と比べて大きく増えた項目は、「USBメモリ/記録媒体の紛失・盗難」と「非デジタル文書の紛失・盗難」だった。

  • 重視する経営課題 引用:「企業IT利活用動向調査2021」

重視する経営課題を尋ねたところ、「業務プロセスの効率化」「従業員の働き方改革」「情報セキュリティの強化」が上位3位であり、過去2回の調査と同じだったが、その割合は減少傾向にある。

一方、「営業力の強化」(24.0%)、「企業間(グループ、業界、取引先間)の情報連携」(18.6%)が過去2回を上回り、コロナ禍における環境変化への対応が重視していると両者は見ている。

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  • 働き方改革への取り組み状況の変化 引用:「企業IT利活用動向調査2021」

働き方改革の取り組みとしては、「テレワーク制度の整備」(45.6%)、「在宅勤務制度の整備」(41.3%)、「働き方改革に伴うITシステムの導入」(40.3%)が拡大した。

  • クラウドサービスの利用状況推移 引用:「企業IT利活用動向調査2021」

企業システムをすべてクラウサービス利用している企業は、2020年1月の調査から2ポイント強増加して5.9%となった。また、約半分超のシステムをクラウド化した企業の合計は、同じく37.0%から45.5%に増加し、5割に近づきつつある。コロナ禍によるテレワーク勤務の進展により、クラウドサービスを利用したシステムにシフトしていると両者は考えている。

2020年8月に総務省と経済産業省が共同で策定した「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックVer1.0」の認知度では、内容を知っているという回答は6割超、また全体の約4割が活用中または活用予定と回答した。

ITRのコンサルティング・フェローである藤俊満氏は、「一部の企業においてはオフィス勤務への回帰も見られますが、テレワーク勤務はコロナ対策としてだけではなく、勤務形態のひとつとしてとらえられつつあります」と分析している。

また、「システムのクラウド化はさらに進展していくため、セキュリティ対策は現行の境界型防御スタイルから、ゼロトラストネットワークと呼ばれる次世代のセキュリティ・アーキテクチャ(形態)に進化すると見ています」との見通しも示している。