リンクスは3月16日に記者会見を開催し、2021年1月より掲げている中長期ビジョンである「AI戦略」実現の第一弾として4月1日よりAI画像処理検査装置「Inspekto(インスペクト)S70」の提供を開始することを発表した。
リンクスが掲げるAI戦略、その狙いとは?
同社が掲げるAI戦略とは、既存で展開しているIIoT事業、ロボット事業、画像処理ソフトウェアなどを取り扱う画像処理事業、エンベデットビジョン事業のそれぞれにおいてAI技術を活用した製品を投入し、事業を強化していくというものだ。
この戦略を掲げた背景には、コロナ禍によって製造メーカーの多くが、これまで以上に省人化・自動化の必要性に迫られていることがあるといい、製造現場の無人化を推し進めるために取り扱い製品のAIへの対応強化を図っていくという姿勢を打ち出したとしている。
また、同社の村上慶 代表取締役社長は「これまで目視の検査からの代替が難しかった3次元画像処理も、技術の発達によってAIを活用することで対応することができるようになってきた。AI/ディープラーニング(DL)機能を搭載したマシンビジョンシステムはこれからの成長市場だ」と述べ、AI技術の発達により、今まで市場投入が難しかった分野にもAIを活用した製品の投入が可能になってきたことや、AI/DL機能を搭載したマシンビジョンシステムが世界的な潮流となる見通しがあることも戦略の背景にあると説明している。
Inspekto(インスペクト)S70の特徴は”自律型”と”汎用性”
同社がAI戦略実現の第一弾として市場に投入するAI画像処理検査装置「Inspekto(インスペクト)S70」は2017年にイスラエルで創業されたInspektoが提供するソリューションだ。
具体的には、検査ラインに必要な、カメラ、レンズ、照明などのハードウェアとAI画像処理を行うソフトウェアがパッケージとして提供される。
その最大の特徴は自律型マシンビジョンであるという点。自律型であるため、システム構築などが必要なくAIエンジニアがいない現場でもAIの活用が可能だという。
また、工程ごとに「見るAI」、「見つけるAI」、「検査するAI」という独自技術が活用されている点も特徴となっている。
「見るAI」は、検査工程の最初の部分で用いられるAIで、検査対象物をカメラの下に置いた際に、従来ならば露光時間や焦点、照明など人の手で調整する必要があった撮像環境をAIが自動で調整するというものだ。
「見つけるAI」は、検査対象物の認識に特化したAIで、さまざまな形状物、表面素材であっても、自動で検査対象物を認識することが可能だという。
そして「検査するAI」は良品画像を最小20枚学習させるだけで検査を開始することを可能とするAI。対象物1つの検査は0.8秒以内で完了し、欠陥位置を可視化することができる。
同社は、良品画像の学習などを含め、検査の開始までのセッティング時間は45分ほどで完了できるとしており、新品種の検査が試しやすいといったメリットがあるという。 また、さまざまな製品に対応できるAIであることから、汎用的に使用できる点もほかの検査装置と差別化できる点として挙げている。
なお、ターゲットとしてはエンドユーザーの品質管理部門としており、まずは1台導入し、新品種の検査を試してもらって、評価結果が良ければ新品種の検査ライン用にさらに1台導入してもらい、悪ければ専用検査機器の導入を検討してもらうといった使用方法を想定している。このような市場での拡大を目指すことで、同社では2021年度中に50台の販売を計画している。