中国の李克強首相は3月上旬に開幕された全国人民代表大会(全人代)で演説を行ったが、その中にて2021年から始まる新5カ年計画における最先端半導体や人工知能(AI)への研究開発投資を拡充する方針を表明したと海外の複数のメディアが報じている。米国との技術開発競争および世界的な影響力を増すための争いで勝つための政策だという。

それによると、米国が強みを持つ高性能半導体、OS、コンピュータ用プロセッサ、クラウドなどを「核心技術」としてイノベーションを起こすため、今後5年にわたって研究開発に対する支出を年7%超の勢いで増やすとしている。これにより、過去の5年間に比べて国内総生産(GDP)の大きな割合を占める見通しであるとのことで、「中国の発展を戦略的に支援するために独自の科学技術を強化する」としている。中国政府は、計画より遅れている半導体の自給自足の実現を目指して、半導体製造支援をさらに推進するものと思われる。

増産のための中古半導体製造装置が不足

一方で、半導体デバイスの供給が車載半導体をはじめ、さまざまな分野でひっ迫する状況が世界的な問題となっている。車載半導体の多くは先端プロセスを用いないため、SMICを含む200mmウェハでも対応できるものが多く、そのため10nm未満のプロセスを必要としない中国のレガシーファブも盛況だという。しかし、これ以上の増産を行うために必要な200mmウェハ対応の製造装置の多くはすでに生産が行われていないものが多く、中古を入手する必要があるが、すでにそれらの多くは市場で新たな買い手が購入済みであるため、入手が困難となっており、ラインの増設が思うように進みそうにないと中国の複数メディアが伝えている。

200mmウェハ対応の半導体製造装置を現在、入手しようと思うと、基本的には、他社が工場閉鎖などで放出した中古装置を入手するしかない。例外的に、ごく一部の製造装置メーカー(例えばキヤノンの露光装置)は長年にわたり製造中止にしていた200mm装置の製造を再開したが、注文してもすぐには入手できないので、一刻も早く増産するため、新品よりもはるかに高い価格で中古装置を求める企業も少なくないという。

ちなみに、日本の半導体企業が放出した中古半導体製造装置の9割は中国に輸出されているとされるが、日本の200mmラインの閉鎖は一巡してしまっており、品不足となっているため、この一年で日本製中古装置の価格は2割以上高騰したという。

なお米Bloombergの調査によると、中国企業が2020年に日本や韓国、台湾などから購入した半導体製造装置は前年比約20%増の約320億ドルに達したという。