政府の地震調査委員会(平田直委員長)は東日本大震災から10年を経過することを受けて9日に会合を開き、「東北地方太平洋沖地震の余震域や内陸を含む周辺では、今後も長期にわたり強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があることに注意が必要」とする委員長見解を発表した。
同委員会は10年前の巨大地震を発生させたプレート境界「日本海溝」のほかにも、静岡―南部九州沖を走る南海トラフや北海道東方沖の千島海溝、神奈川県沖の相模トラフでも巨大地震が起きることを指摘している。東日本大震災では1万5899人が亡くなり、行方不明者は全国で2500人を超える(警察庁調べ)。同委員会は多くの人がこの戦後最悪の自然災害を思うこの機会に、改めて「大地震はいつ起きてもおかしくない」ことを強く警告した形だ。
見解は「東北地方太平洋沖地震の余震活動は、岩手県沖から千葉県東方沖にかけての広い範囲(余震域)で継続している。1年あたりの地震発生数は、10年前の地震の前より多い状態が続いている」と指摘した。そして2月 13 日に福島県沖でマグニチュード(M)7.3の大余震が発生したことに言及した上で「余震域内では現状程度の地震活動が当分の間続くと考えられる」「今後も長期間にわたって余震域や内陸を含むその周辺で規模の大きな地震が発生(する)」とした。
見解はまた、2004 年に発生したスマトラ島北部西方沖の地震(M9.1)では、3カ月後にM8.6、約2年半後にM8.4、約5年半後にM7.8、約7年半後と約11年後にそれぞれM8.6、M7.8という大きな地震が発生していることを例示し、東北地方でも2月に発生した大きな余震をさらに上回る地震が起きる可能性もあることを示唆している。
地震調査委員会によると、東北地方太平洋沖地震後の約1年間で東向きに77センチ、沈降12センチ、隆起17センチの地殻変動を記録。最近1年でも東向きに5センチ、隆起6センチの地殻変動(余効変動)を観測している。同委員会は「時間の経過とともに余効変動は大局的に小さくなっているものの、地震前の動きには戻っていない」と強調している。
同委員会は、南海トラフ巨大地震について30年以内にM8〜9級の巨大地震が起きる確率は70〜80%としている。中央防災会議防災対策推進検討会議の推計によると、津波による浸水域人口は東日本大震災が約62万人だったのに対し、南海トラフ巨大地震は約163万人。予想される死者・行方不明者の数は約32万3000人に及ぶと想定され、事前防災の徹底によって犠牲者の数を減らす必要があると指摘されている。