SAPジャパンは3月9日、RISE with SAPを活用したDX推進戦略に関するプレスセミナーを開催した。前半はRISE with SAPに関する説明が行われ、後半はSAP S/4HANA Cloudの導入を決定したI-PEXの事例が紹介された。
「RISE with SAP」で企業のDXを支援
バイスプレジデント エンタープライズビジネス統括本部長の平石和丸氏が、インテリジェントエンタープライズを目指す企業の包括的な変革を推進するコンシェルジュサービス「RISE with SAP」について説明した。
平石氏は、「この5年でERP導入の機運が高まっているが、その要因に、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)への意識の高まり、グローバル化による環境変化、クラウド化がある。バックオフィスを効率化しておかないと、DXのメリットを享受できない」と語った。
「RISE with SAP」はインテリジェントエンタープライズを目指す企業の支援をうたっているが、インテリジェントエンタープライズとは、「ITの力を使って究極の生産性の高い世界を実現するためのオファリング」だという。
RISE with SAPのコアはSAP S/4HANA Cloudであり、加えて「Discovery Report」「Readiness Check」「Custom Code Analyze」「Learning Hub」「Starter Pack」「Platform Services」が提供される。平石氏は「PoCができるよう、ERPとSaaSをセットアップして提供する。ERPを買うことで、PoCができる権利が手に入る。そのため、意思決定のスピードが上がり、本稼働の際はスムーズに移行することができる」と説明した。
平石氏は、SAP S/4HANA Cloudの特徴について、「これまで、オンプレミスのERPをクラウドに移行する際、アドオンやデータの移行に制約があったが、SAP S/4HANA Cloudではこの制約が低減されているので、既存の資産を生かすことができる」と語った。
加えて、SAP S/4HANA Cloudに移行することで、インフラ、ソフトウェア、運用をSAPに集約することが可能になり、TCOの削減が見込めるという。
クラウドでERPの導入の障壁解消を
続いて、I-PEXの常務取締役の緒方健治氏が同社のクラウド移行計画について説明した。同社は同日、SAPの次世代クラウドERP「SAP S/4HANA Cloud」およびクラウド型製造実行管理ソリューション「SAP Digital Manufacturing Cloud」の導入を決定したことを発表した。
I-PEXは、2010年より国内外拠点と連結子会社を含む21社で1つのインスタンスでビジネスプロセスを統一してSAP ERPを活用してきたが、今回、プライベートクラウド上で「SAP S/4HANA Cloud」を利用することになった。
緒方氏は、2027年保守期限を待たずに、SAP S/4HANAを導入することにした理由として、「MESの統合」「技術の継承」「クラウドシフトの時期到来」を挙げた。
「もともとERPはクラウドで使いたいと思っていたので、今、そのタイミングが来たと思っている。また、10年前位にERPの導入を始めた時のメンバーもそれなりの年齢になってきており、導入に関するノウハウなどを若い世代に引き継ぎたいと考えている。プロジェクトを進めていく上で、つまずいた時の対処法などを学んでもらいたい」(緒方氏)
また、緒方氏は「クラウドへの移行を進めていく上で、抵抗は必ずあるがこれからは、誰もがいつでもどこでも同じ情報を見ることができる必要がある。デジタル化に人がついていかなくてはいけない。そのためには、業務改革も必要」と語っていた。
今回、I-PEXはプライベートクラウドを利用しているが、「本来はパブリッククラウドを使いたい」と緒方氏。今回、SAP S/4HANA for Cloudを導入するにあたって1年間かかるが、「そんなに時間がかかっていいものか」と疑問を投げかけた。
緒方氏は「もともと、ERPは時間とコストがかかると言われているが、これらの課題を解決するには、導入の障壁をなくすことが大切。パブリッククラウドに移行する時にはスムーズにいってほしい」と、パブリッククラウドに対する期待を語っていた。