企業が健全な経営を目指すのであれば、そこで働く人たちが健康でなければいけません。近年、福利厚生でフィットネスセンターの設営や健康的な軽食の提供、あるいは屋上庭園を設置することで、従業員が健康的に働ける環境を提供することがトレンドになっていました。その反面、仕事が原因で多くの人々が病気になってしまっているのも事実です。
今日、企業は従業員の身体的健康だけでなく、精神的な健康をサポートすることにも力を入れる必要があります。世界保健機関(WHO)憲章の前文では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(wellbeing)にあることをいいます(日本WHO協会訳)」と明記されています。
将来の不透明さ、不安、ストレスに加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う新たな心労が、従業員の負担となっており、企業はより包括的なアプローチで従業員をサポートする必要があるのです。2020年は、新しいライフスタイルに合わせようと必死に調整をし、テレワークという手段を使って、生産性を担保してきました。
また昨年は、なんとなく期待感をもってニューノーマルという言葉を使っていたと思います。しかし、2021年は緊急事態宣言で始まり、コロナとどのように共存しながら心身のウェルビーングを維持するのかを考え始めたフェーズなのではないでしょうか。
こうした中、企業にとっても、改めて従業員のウェルビーングを再度検討する時期に入っています。企業は、従業員体験の3つの軸(企業文化、デジタル環境、オフィス環境)にウェルビーイングを組み込む必要があります。
「完璧でなくてもいい」という雰囲気づくり
ウェルビーイングの制度を作ったとしても、それを利用する支援的な風土がなければ意味はありません。ウェルビーイングは、社員同士がお互いを支え合い、尊敬、信頼、協力、思いやり、共感といった企業文化を持つ組織で最も効果を発揮するものです。
メンタルヘルスに関しては特に、社員が自身のケアに時間を割いたり、気兼ねなく周りに助けを求められたりする環境が必要です。そのような環境づくりには、以下のような取り組みを取り入れてはいかがでしょうか。
カウンセリング制度の導入、瞑想コミュニティの結成、ストレスと向き合うための研修など、精神的な健康とマインドフルネスのためのプログラムを用意し、リーダーに各プログラムを推進させる。シトリックスでは、毎週水曜日に継続してラジオ体操を続けています。誰でも好きな時に参加ができる体制を取っています。
ウェルビーイングプログラムに参加しているチームメンバーの理解と支援をマネージャーに呼びかける。これは、ボトムアップを引き出すリーダーシップです。押し付けるのではなく、ウェルビーングについて、会社としてリーダーシップとして気にかけているというシグナルを出すことが重要だと思います。
リーダー達に彼らの悩みやそれらとどう向き合っているかをオープンに話してもらい、ヒアリングする機会を設ける。リーダーシップ自らが、自分の弱さをオープンに語り、ありのままを見せることは非常に重要なコミュニケーションとなります。
このような取り組みがうまく働けば、従業員は、歯医者に行くのと同じように、瞑想やセラピーに安心して行けるようになります。
デジタルウェルネスに焦点を当てる
多くの社員が自宅で仕事をするようになった今、やりとりの大半はオンライン上のものになっています。つまり、デジタル・ワークスペースの質が従業員エクスペリエンスに直結するようになったのです。心拍数を測ったり、体重を管理したり、瞑想をサポートしたり、さまざまな健康アプリが存在します。
しかし、毎日の仕事の中で行うテクノロジーとのやりとりこそ、ウェルビーイングに大きな影響を与えています。もし、従業員が毎日たくさんのアプリケーションの通知に気を取られたり、気疲れしていたりしたら、結果を出すために必要な集中力は維持できないでしょう。直感的に扱える統合されたテクノロジーがあれば、重要なものを見落としたり、パスワードを忘れたりするようなストレスを感じることも少なくなります。
成功するためのスペースを作る
デジタル・ワークスペースを活用すれば、企業は安全で信頼性が高く、安定して質の高い体験を提供できるうえ、社員は周りに雑音や気を散らせるものがない環境で、より集中して新しい価値を生み出すことができます。また、マイクロアプリの機能を活用して、以下のような取り組みをすることで、より従業員の生活にウェルビーイングを組み込むことができます。
- 定期的なストレスチェックで従業員の幸福度をトラッキングし、リアルタイムで従業員満足度調査を実施する
- ポジティブなニュースを共有して士気を高める
- 従業員の業績をきちんと認め褒めることで、エンゲージメントを促進しチームの大事な一員であるという意識を育てる
- 身体面、精神面、経済面、感情面などあらゆる場面で従業員をサポートし、健康でいられるようにするために、関連するコンテンツや「よくある質問」などを整備する
今コロナ禍で、人々はそれぞれ違った悩みを抱えています。そして、その悩みは日々変化し、2021年の悩みはより深刻になっているということを自覚をするべきです。しかし、一つだけ共通しているのは、人々が職場体験に満足することで、自分の潜在能力を引き出し、目的意識を持ってクリエイティブに仕事ができるようになるということです。そして、従業員が日々のストレスをうまく管理できるようになった時、組織全体の成功につながっていくのです。