パリ協定に参加する各国が提出した温室効果ガス削減目標水準ではパリ協定の目標達成にはほど遠い、とする報告書を国連の気候変動枠組み条約事務局がまとめた。報告書は「現状での削減効果は2030年までに10年比の1%未満でしかない」と指摘し、各国・地域に削減目標の上積みを求めている。

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    国連の気候変動枠組み条約事務局が公表した報告書のプレスリリースに使用された温室効果ガス排出のイメージ画像(Credits:The UNFCCC secretariat/Vlad Cheten)

パリ協定は、産業革命前と比べた世界の気温上昇を2度未満、できれば1.5度未満に抑えることを目標に、協定に参加する各国・地域に削減目標を提出、更新することを義務付けている。国連の条約事務局は、1.5度目標達成のためには30年の温室効果ガス排出量を10年比で45%削減、2度目標達成のためには25%減らす必要があると分析している。

2020年末までに世界75の国・地域が条約事務局に削減目標を提出している。条約事務局がこれらの削減目標を積み上げて分析したところ、削減効果は全体で30年までに10年比の1%未満だった。

日本政府は「30年度に13年度比で26%減」との目標を15年に提出。昨年3月に目標を据え置いて再提出している。菅義偉首相は昨年10月に50年までに国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする方針を表明。30年の削減目標についても意欲的な目標を出す姿勢を示している。また米政府はバイデン大統領就任後にパリ協定に復帰し、4月22日に気候変動対策に関する主要国首脳会議(気候変動対策サミット)を開催予定で、米国メディアはこの場で新しい削減目標を示す方針であると伝えた。

条約事務局のエスピノーザ事務局長は「この報告書はパリ協定の目標達成に向けた各国の行動が順調に進んでいないことを示している。『2050年炭素ゼロ』を目指したいなら各国はすぐに(削減目標上積みの)革新的決定をする必要がある」と強調している。

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    国連気候変動枠組み条約事務局のエスピノーザ事務局長(国連気候変動枠組み条約事務局提供)

また国連のグテーレス事務総長は「報告書は地球にとって警告だ。主要排出国は野心的な削減目標を打ち出す必要がある」などとするコメントを出し、今年11月に英国・グラスゴーで開催予定の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)までに削減目標を上積みした新たな目標の提出を求めている。

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