1月中旬以降減少傾向にあった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界全体の新規感染者数が、2月下旬の集計で再び増加に転じたことが分かった。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が日本時間1日の記者会見で明らかにした。テドロス氏は「ワクチン頼みは間違いだ」と警告し、改めて基本的な感染防止対策の徹底を求めている。
WHOによると、世界の1週間当たりの新規感染者は2月28日付の暫定値で260万人を上回った。1月10日付集計で過去最多の495万人に達したが、その後減少が続き、2月14日付では272万人に、同月21日付では245万人になっていた。これは昨年10月ごろの水準だった。
しかし最新集計となる先週金曜日付では265万人を記録。世界全体で6週続けて減少してきたが、先週は7週間ぶりに再び増加に転じた。日本を含むWHO西太平洋のほか、南北アメリカ、欧州など、WHOの世界6地域管内のうち4地域管内で増加が確認された。
記者会見でテドロス氏は「ワクチンは命を救うことには役立つが、国がワクチンだけに頼るなら、その国は間違いを犯していることになる」と述べ、人が密集しているところを避け、人との距離を確保し、手指消毒やマスクをする、といった基本的な感染防止対策を掲げた。
テドロス氏は「ガーナとコートジボワールがCOVAXを通じて供給されたワクチン接種を始めた最初の国になった」と強調。先進各国に対し、引き続きCOVAXへの貢献に期待を寄せた。COVAXとはCOVID-19のワクチンを共同出資・購入して発展途上国にも行き渡らせる国際枠組みで、92カ国・地域にワクチンを無償提供する。その第1便となるワクチンが2月24日に西アフリカのガーナに到着していた。現時点ではWHOが緊急使用を承認した米ファイザーと英アストラゼネカが、それぞれ開発したワクチンが発展途上国に振り向けられることになっている。
またWHOでCOVID-19の緊急事態対応を担当するライアン氏は同じ記者会見で「年内にCOVID-19と決別できると考えるのは現実的でない」と指摘し、ワクチンの普及に期待しつつも、感染収束は来年以降に持ち越す可能性が高いとの見方を示した。
米ジョンズ・ホプキンズ大学が集計した日本時間2日午前時点での世界の感染者は1億1440万人に達している。
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