ロッキード・マーティンとNECは3月2日、衛星・宇宙航空分野でのAI技術活用に関する2017年からの協業の成果として、宇宙船開発におけるNECのAI技術「インバリアント分析技術」の本格導入に合意したと発表した。

両社は同技術について、複数年にわたるライセンス契約の締結を検討しており、NASAの月探査計画「Artemis(アルテミス)」向けにロッキード・マーティンが開発している有人宇宙船「Orion(オリオン)」をはじめ、さまざまな宇宙船のプロダクトライフサイクルで活用される予定。

  • 左から、ロッキード・マーティンが開発中の有人宇宙船「オリオン」、宇宙船「オリオン」から収集したデータを分析する様子

インバリアント分析技術は、システム、発電所、工場、ビルなどに設置された多数のセンサーから収集されるデータより、システムの振る舞いを学習・監視することで、いつもと違う挙動を自動的に検知し、早期対処を可能にする。

両社の共同開発チームは、宇宙船の初期製造試験と運用シナリオにおいて、インバリアント分析技術の有効性を評価。その結果、同技術をロッキード・マーティン・スペースのデータ分析システム「T-TAURI」に統合し、宇宙船の設計、開発、製造、試験段階におけるシステムの異常予兆検知に用いることを決定したという。

これにより開発チームは、システムの徹底的かつ包括的な理解に加えて、将来的にはデジタルツインなどの高度な基盤システムも構築できるようになるとしている。

取り組みの第1弾として、インバリアント分析技術を統合したT-TAURIを用いて、宇宙船「オリオン」の試験で生成された大量のデータを分析した。具体的には、約15万個のセンサーのデータから、4時間以内に220億以上の論理的な関係性を抽出し、通常動作のモデルを構築。

このモデルを用いて、今後の「オリオン」開発におけるすべての試験を監視し、予想される動作と実際に起きた異常動作を比較して原因分析に役立てる。これにより、少数の技術者でもシステム全体の試験の詳細な分析が可能になるとのことだ。