日本大学(日大)、順天堂大学、国立成育医療研究センターの共同研究チームは、ヒトの免疫細胞の1つで、アレルギー炎症の責任細胞として重要な細胞である「マスト細胞」が遊離する細胞外小胞中のマイクロRNA(miRNA)「103a-3p」が、アレルギー炎症を増悪化し、長引かせている因子であることを発見し、その作用メカニズムを明らかにしたと発表した。

同成果は、日本大学医学部アレルギーセンター免疫アレルギー学プロジェクトチーム アレルギーセンター副センター長の岡山吉道 准教授、同 豊島翔太ポストドクトラルフェロー、同修士の坂元朋美氏、同医学部 皮膚科学系皮膚科学分野の葉山惟大 助教、同医学部内科学系呼吸器内科学分野の権寧博 教授、順天堂大学医学研究科眼科学の松田彰 准教授、国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部 部長の松本健治 博士らによるもの。詳細は2021年1月16日(米国時間)付の米国アレルギー学会誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」のオンライン版に掲載された。

同研究では、アレルギー炎症に深く関わることが知られているマスト細胞の細胞外小胞の役割を調べる目的で、ヒトのマスト細胞がアレルゲンで活性化する時に遊離する細胞外小胞中のmiRNAを網羅的に調査したところ、miRNA103a-3pを特異的に遊離していることを見出したという。

そこで、アトピー性皮膚炎患者の血清中の細胞外小胞内miRNA103a-3pの数値を健常人と比較したところ、アトピー性皮膚炎患者の数値が有意に増加していることも確認したほか、miRNA103a-3pがどのようにしてアレルギーに関与するかを調べたところ、アレルギー病態に関与する「2型自然リンパ球」からの「インターロイキン-5(IL-5)」産生を増強・持続化させることを突き止めたとしている。

また、重症および慢性的なアトピー性皮膚炎や喘息患者では好酸球が増加する好酸球増多症と呼ばれる症状が見られることが知られている。IL-5は、その好酸球増多を惹起するための必須タンパク質であることも分かっており、重症喘息患者にIL-5をブロックする抗体療法を用いると好酸球増多を抑制し、症状の改善が見られるという。

そのため、研究チームでは今回の結果を踏まえ、ヒトマスト細胞がアレルゲンによって活性化した時に遊離する細胞外小胞に内包されるmiRNA103a-3pが、IL-5産生の増強・持続化をもたらし、アレルギー炎症を増悪・遷延化させる因子の1つであると結論付けたという。

なお研究チームはこれらの成果をもとに、細胞外小胞中のmiRNA103a-3pを特異的にブロックする方法を開発することができれば、それを応用したアレルギー疾患の新規治療薬を開発することが期待できるとしている。

  • アレルギーの増悪化をもたらすメカニズム

    今回の研究によって明らかにされた、アレルギーの増悪化をもたらすメカニズム (出所:順天堂大)