未だ終わりの見えないコロナ禍で2021年も当面は在宅での仕事が続きそう、という人も多いだろう。通勤しなくていいという便利さもある一方で、オンとオフのメリハリがつかない、リラックスできないという声もある。専門家のアドバイスは何か?Dropboxが公式ブログ「Canceling the noise: How to regain focus after an incredibly chaotic year」で伝えている。
リモートワークをしている人にとって家という場所はこの1年で大きく変わったことだろう。これまでは仕事から帰ってホッと一息つく場所だったが、ひっきりなしにやってくる通知に対応し、Web会議を通じて同僚や上司、場合によっては取引先やパートナーまでが、自宅の中に入ってきた感じがする。記事では、「continuous partial attention(継続的で部分的な注意力)」が新しいデフォルトになった、と記している。 注意力を削ぐ要因の1つがメールだ。調査によると、平均的な人は1日に77回メールをチェックしているとのこと。84%の人が、常時電子メールアプリケーションを開きっぱなしにしており、新しいメールが届くと、6秒以内に開封する人は70%にものぼるという。加えて、刻々と変わる新型コロナ関連の状況を始め、気になることが多い。そのため、ニュースを知らせる通知に反応してしまうーー注意を逸らしているのは電子メールやメッセージだけではないのだ。
そこで、記事ではナレッジワーカーとデジタルメディアの関係についての調査を続けているカリフォルニア大学アーバイン校で情報学教授を務めるGloria Mark博士に、リモートワークでの集中について話を聞いている。
Mark博士によると、電子メールに振り回される状況はコロナ禍で悪化しているようだ。「仕事が他の仕事を生んでいる。ミーティングの後にフォローアップの電子メールがあることがほとんどで、ミーティングが続いた結果、行き交う電子メールの数は増えている」とMark博士。対面だと視覚的に様子がわかるが、リモートだと大丈夫か、順調かなどを把握することすらメールなどに頼るしかない。
なお、Slackなどのビジネスチャットは状況の改善には役立っていない、とMark博士。実験では、電子メールをまとめて処理する(返信など)場合と、一通一通に対応する場合とでは、後者の方がストレスを感じていることがわかったとも付け加えている。
DropboxがEconomist Intelligence Unit(EIU)と行った調査では、同僚とつながっていないという不安が注意力を削ぐ要因として挙がった。これについては、「繋がっている人の数」よりも「繋がりの質」が重要、とMark博士は答える。
人が社会関係を維持する数を「ダンバー数」(Dunbar's number/英国の人類学者、進化生物学者であるロビン・ダンバー氏提唱)というが、ソーシャルネットワーク理論ではこの数は少ない、とMark氏。リモートになり、つながった人の数は増えているものの、日常的にやりとりするレベルではない人が多いはずだ。その人たちが何をやっているのかの通知がくれば、注意を削いでしまうだろう。
Mark博士はまた、注意が持続する時間が短くなっているといわれていることについてもコメントしている。注意の持続は、意志の力、広告やソーシャルネットワークのアルゴリズムなどが関係している。そして意志の力は個人によって異なる。意志の力が強くない場合は、技術的なツールを使うことを推奨している。興味深いのは、意志の力が強い人が注意を削ぐサイトやアプリを遮断するアプローチを取ると、逆にパフォーマンスが落ちるという実験結果だ。意志が強い人は、ソーシャルメディアやニュースサイトをみてオンラインで休憩をとっているため、遮断アプローチにより休憩が取れなくなってしまうためだ。
繋がっていないという不安に対しては、Mark博士はオンライン会議の時間を長めにとり、近況を報告しあったり、初対面の人が参加する場合は打ち解けられる時間を10分程度設けることをアドバイスしている。
Robin Ian MacDonald Dunbar氏の提唱するダンバー数は、Wikipediaによると、"人間が円滑に安定して維持できる関係は150人程度"。質の維持には限界があるということにもなる。インターネットが登場してからしばらくの間は、このダンバー数に対応できる安定したメール環境であったと記憶している。その後のエントロピーの増大には、筆者もツールで対応していた。かつてはMozillaのThunderbirdを愛用しており、ドラッグで解析し振り分けするアドオン、Gmailでは定期的にメガマックスなメールを自動で削除するApps Scriptで心地よいメールライフを送っていたが、セキュリティや運用方針によって常時では使えなくなっている。チェックをするだけなら、それこそ音声AIに対応したメールチェックもとても便利なのだが、セキュアな運用が求められる環境ではそうもいかないだろう。環境に応じて使い分けている。ただメールに関してはやはりラベルを含む"振り分け"機能にポイントがありそうだ。
書類整理術における時系列処理の考え方のひとつに"43folder"という考え方がある。1月から12月の月フォルダー12個と1日から31日までのフォルダー31個の合計43個のフォルダーに書類を出し入れすれば年間の業務に対応できるという考え方。これをメールで対応させるのであれば、振り分けフォルダやラベルを対応個分作り、期日や作業日に割り当てる。まだ実践して間もないが、いまのところそれほど悪くはなさそうだ。ただ、メールチェック作業のような連続する細かい作業には、相応のモニタ解像度が必要であるし、仮に毎秒1件の新着メールをチェックしなければならないような環境であれば、それ自体がおかしいと考えたほうが良いだろう。少なくとも目には大きな負担がかかる。