米国の探査車「パーシビアランス(不屈、忍耐)」が日本時間19日午前、火星の「ジェゼロクレーター」に計画通り着陸に成功した。米国の火星探査車は1997年以降、5機目。生命が存在した可能性を探るほか、地球への回収を視野に試料も採取する見込み。火星探査機はアラブ首長国連邦(UAE)の「ホープ」、中国の「天問1号」も今月に入り軌道投入に成功しており、昨年7月に地球を出発した3機全てが火星に無事到着した。

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    パーシビアランスの火星着陸の想像図。逆噴射装置つきのクレーンに吊り下げられた状態で降下した(NASA提供)

パーシビアランスは昨年7月30日に地球を出発。約4億7200万キロの航行を経て19日午前、火星の大気圏に突入した。パラシュートを開き速度を落としながら高度を下げた後、逆噴射装置つきのクレーンに吊り下げられた状態で降下を続け、計画通りに着地した。午前5時55分ごろ、米カリフォルニア州にある米航空宇宙局(NASA)の管制室で着陸成功が確認されると、担当者らが立ち上がって歓声を上げ、「恐怖の7分間」と呼ばれた大気圏突入後の着陸作業を乗り切った喜びを露わにした。

成功を受け、NASAのスティーブ・ユルチク長官代理は「この着陸は米国や世界の宇宙探査にとって極めて重要な瞬間の一つで、私たちが発見の最前線にあり、いわば教科書を書き直すため鉛筆を削っていることが分かったときだ。最も困難な状況にも耐え、科学と探検を刺激し、前進させるというわが国の精神を体現した」とコメントした。

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    パーシビアランスの着陸成功を確認し喜ぶ管制担当者ら(ビル・インガルス氏撮影、NASA提供)

かつて湖だったとされるジェゼロクレーターに着陸。生命が存在した痕跡を探るほか、地質調査や、大気の主成分である二酸化炭素から酸素を作る実験などを進める。他の惑星での初の航空機となるヘリコプターの実験も計画。火星の試料を採取して容器に保管し、将来の別の探査機で回収し2030年代初頭に地球に運ぶことも、欧州と共同で検討している。

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    パーシビアランスが着陸後、初めて撮影し送信した火星の地表の様子(NASA提供)

NASAのロリ・グレーズ惑星科学部長は「パーシビアランスはこれまでで最も洗練されたロボット地質学者だが、生命がかつて存在したかを確認する上で重大な立証責任を負っている。素晴らしい搭載機器により多くを学べるが、試料がかつて生命の証拠を含むかどうか知るには、地球に(探査車の搭載機器よりも)はるかに有能な研究室や機器が必要になりそうだ」と指摘している。

一方、日本のH2Aロケットで地球を出発したUAEの周回機ホープは、2月10日に軌道投入に成功した。アラブ諸国初の惑星探査機。上空2万~4万3000キロを周回し、高精度カメラ、赤外線と紫外線の分光計を使って大気や気候の詳細な理解を目指す。今年のUAE50周年祝賀、科学者や技術者の育成も重視している。

周回機や探査車などからなる中国の天問1号も10日、周回軌道への投入に成功。同国の探査機の惑星到達は初めて。中国国家航天局などの資料によると、周回機にはカメラや磁気計、鉱物スペクトル分析装置などを搭載しており、多面的に火星を探査するという。今後は静止軌道に移り、着陸地域を探査した上で5~6月に火星に着陸する。

火星探査機は、火星と地球が互いに接近する約2年ごとに、飛行距離が短くなる打ち上げの好機を迎える。昨年が接近の年だったため、この時期に探査機の到着ラッシュを迎えた。

日本は2003年、火星探査機「のぞみ」の軌道投入に失敗。現在は火星の衛星フォボスの試料を採取し地球に回収する「MMX」計画を進めており、24年打ち上げを目指している。

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