アンシス・ジャパンは2月17日、オンラインにて技術説明会を開催。同社が2021年1月にリリースした3次元高周波電磁界シミュレータ「Ansys HFSS」の最新リリース「Ansys HFSS 2021 R1」に搭載された新機能「Mesh Fusion」の詳細を明らかにした。

Mesh Fusionは、従来はメッシュのダイナミックレンジが広すぎて不可能であった半導体チップ、プリント基板、システムといった異なるサイズのコンポーネントを一回で解析できるようにする技術。同技術の開発に至った背景について同社は、「最新の電子製品は高密度で電圧マージンが低く、また高機能を実現しつつも低消費電力が求められている。そのためコンポーネント間やシステム全体における複雑な相互作用を解析する必要が生じている」と、最近の電子機器の発展によるニーズがあったとする。

そのため主なターゲットユーザーとしても、家電や自動車OEM、5G通信機器のほか、今後、電動化が進むことが期待される各種分野のメーカーとしている。

Ansys HFSSは有限要素法でMaxwell方程式を計算する方式を採用した3次元高周波電磁界シミュレータだが、その要素は四面体のメッシュで構成されてきた。四面体のメッシュを採用することで、CADデータの座標値に対して、忠実なメッシュデータを構築することが可能になるためだ。

しかし、例えば半導体のような小さな形状モデル、プリント基板のような中程度の形状モデル、そしてシステム全体のような大きな形状モデルでは、従来、メッシュ生成の失敗を避けるために採用していた許容値がそれぞれ異なるため、同時に判断することができなかった。

こうした課題を解決するために開発されたのがMesh Fusionだという。具体的には、半導体、プリント基板、システムそれぞれを1まとまりのモデルとしてHFSSに読み込むことを可能とした。これにより、メッシュの生成が各モデルごとに分割されて実施されるようになり、それぞれのサイズに応じた許容値が与えられ、大きなモデルと小さなモデルが混在しても安定して全体の解析が可能になったとする。

  • Mesh Fusion

    Ansys HFSS 2021 R1に搭載されたMesh Fusion技術により、それぞれ異なる大きさのモデルの混在環境でも一貫した解析を行うことが可能となった (資料提供:アンシス・ジャパン)

ただし、メッシュを個別に生成すると、サイズごとに大きさが異なるため、各モデルの境界部分のメッシュが不連続となってしまう。この状態のままでは有限要素法では解を求めることができないため、メッシュの中に不連続の部分があっても、各行列間で解析を行い、境界面の解に関しては、Maxwellの方程式が成り立つにはどういう条件なのかを繰り返し演算することで収束させる手法を採用。これにより、従来よりも高い精度で解を求めることが可能となったという。

また、繰り返し演算が行われるため、その処理時間が必要となるが、一方でモデルが複数存在して、それを並列処理できるため、解析速度自体は従来からそこまで変わらないで済むとしている。

  • Mesh Fusion

    Mesh Fusionを活用した解析事例。すでに先行していくつかのメーカーで利用されているという (資料提供:アンシス・ジャパン)

なお、将来的な構想としているが、メッシュを分けて組み合わせることができるようになったことから、部品メーカーが部品を提供する際に、保証するデータを入れ込む形で提供することで、完成品メーカーは、そこをいじることなく、その周辺のモデルを作成するだけで済ませることも可能になることが期待されることから、開発期間の短縮や解析精度の向上といった観点から、そうした機能の搭載も図っていきたいとしている。