必要なスキルと社員のスキルがマッチしない「スキルギャップ」問題ーー新しい課題ではないが、新型コロナで急激にデジタル化が進む中でさらに大きくなっている。問題解消のためにはまず、自社のスキルマップを作ろう、と助言するのは、インドの人事(Human resources)情報サイトPeople Mattersの記事「How to map skill development needs across functions」だ。
新型コロナで求められるスキルが変化している。リモートから業務をこなすためにはデジタルツールを操作できなければならないし、申請などの手続きもオンラインしかできなくなったというところもあるかもしれない。多くの人が新しいツールに遭遇し、不安や焦りを覚えて試行錯誤したはずだ。また、これを乗り越えて利便性や効果を実感した人も多いのではないだろうか?
新型コロナに関係なく、ビジネストレンドはデジタル化、企業は生き残りのためにはデジタル化に止まらず、"DX"つまり「変革」が求められている。これまでの売り方、作り方、マーケティングなどが変われば、当然必要なスキルも変わる。ーーつまり、スキルギャップ問題はもっと深刻になると予想できる。
"ニューノーマルでは新しいビジネススキルが必要"と記事、そこでまずは自社にあるスキル地図(スキルマップ)を作ることを推奨している。そのステップは次のようなものだ。
1)コンピテンシーフレームワークを作る
ハイパフォーマー(業績が高い社員)がどんなスキルを仕事なのかを理解しよう。そのために、ハイパフォーマーとその上司に仕事のやり方、知識、資格やスキルなどを聞いて、なるべく客観的なコンピテンシーフレームワークを作ろう。
2)スキルギャップの評価
どこにスキルギャップがあるのかを明確にする。ここでは、「従業員が自分たちの役割で成功にするために、どんなスキルが必要か?」と各部署に尋ねる。アンケートだけでなく、勤務評価や自己分析のデータなども活用して、現状と理想を明確にする。
3)従業員とのコミュニケーション
スキルギャップの内容について従業員に伝える。同時に、スキルをあげたい、新しいスキルを獲得したいという社員に対して、学習やトレーニングの情報や機会を提供することも重要だ。
これに加え、従業員のスキルや能力にタスクを合わせるアプローチも重要だという。慌ててリモート体制を整えたのであれば、従業員の技能や関心を持っていることに合わせてタスクを考えてもいいだろう。このほか、タレント(人材)マーケットプレイスのように、スキルの需要と供給を管理するやり方も紹介している。企業はスキル開発にあたって、事業側のニーズ、業務内容、従業員の3つのバランスを考えながら進めるべきだとしている。
緯度を大きく北へ移動し、ハンガリーはブダペストの企業UX studio。UI/UXデザインを得意とする従業員50人未満の企業だが、GoogleやNETFLIX、UEFA(欧州サッカー連盟)など世界規模のクライアントの数々と仕事をし、自らも「UXfolio」や「Copyfolio」といったクリエイター向けのWebサービスを構築している。同社の公式ブログでは、実際にコンピテンシーマップの作り方を紹介している。2019年の段階のものだが同社ブログの例では以下の14個を抽出している。
- General UserResearch
- User Needs Evaluation
- Usability Evaluation
- Metrics and Measurements
- Information Architecture
- Prototyping
- Interaction Design
- Visual Design
- WritingClient Management
- Professional Cooperation
- Business and Strategy
- Development
- Workshop Facilitation
それぞれのコンピテンシーを具体的に掘り下げ、詳細なリストを作る。公式ブログにはリストの例も掲載しているが、ここでの掘り下げ方がポイントになりそうだ。求める習熟度やスキルを簡潔だが具体的な文書でリストアップしている。それを6段階(全く精通していない~エキスパートまで)の習熟度に当てはめていくことでスキルマップを作っている。
多種多様なレベルでのスキルマップがあるのだろうが、UXやUIの重要性が高まるなかで同社の方法も参考になるのではないだろうか。