新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を背景に、多くの企業がリモートワークを取り入れるなど、「会社に勤める」という言葉の定義が大きく変わろうとしている昨今、それはものづくり企業も同様である。

リコーは2018年より毎年、創立記念日である2月6日に全社員を対象とした創立記念イベントを開催してきたが、今年は「Foundation Day 2021 #OneRicoh」と題し、オンライン形式で開催。

同社の創立理念や価値観の再確認、そしてこうしたオンラインが活用される時代だからこそ、ものづくり企業として必要とされるものは何か? といったことを、社員が一体感を持って考えることを目的に「#OneRicoh」をテーマとして執り行われた。

  • 山下良則社長

    2020年11月に開設した次世代ワークプレイス「3L(サンエル)」でFoundation Dayの配信にのぞむリコーの山下良則社長。創立記念イベントの仕掛け人でもある(画像提供:リコー)

オンラインだからこそできる双方向コミュニケーション

イベントのメインプログラムは、リコーの日々の活動の最も基礎となる価値観を定めている「リコーウェイ」に則り表彰を行う「リコーウェイアワード」の表彰者たちを中心としたパネルディスカッション「#OneRicoh会議」を「いま編」、「未来編」、「グローバル編」の3つのテーマで実施。

各パネラーは遠隔地からオンライン接続という形でディスカッションを繰り広げたほか、自社開発のアンケートシステムと連携させることで、聴講者からの質問や感想の募集を行うなど、パネラー以外も参加できる仕組みが整えられ、聴講者からのコメントにパネラーや山下社長が答えるなど、全社員参加型で繰り広げられた。

  • パネルディスカッション

    パネルディスカッションの様子 (画像提供:リコー)

イベントは全体を通じて約2時間半の構成であったが、その間送られてきたコメントは約400件。 その中には、「リモートワークが当たり前になる中でのFoundationDayイベントが皆さんとのつながりを感じさせてくれた」、「テレワークに慣れるとこういうオンラインイベントは逆に盛り上がる」などといった感想も見受けられたという。

  • イベント中の感想

    イベント中にアンケートシステムに寄せられた聴講者からのコメント。発表を行った社員に対する感想などが寄せられた (画像提供:リコー)

オンラインだからこそできる自社のさまざまな取り組みの共有

社員数が数千人、数万人規模の会社だと、自分が普段関わらない部署の業務がどういったものかを知らない、といったことも多い。

今回のイベントでは、先述した自社開発のアンケートシステムによる双方向配信に加え、同社が主催するアクセラレータープログラム「TRIBUS」から生み出された自動文字起こしシステムを使った字幕配信機能、話した言葉をイラストにする「piglyph」、360度カメラ「RICOH THETA」を活用したリコーの創立者である市村清氏の旧邸宅のバーチャルツアーなど、自社が生み出した新技術を活用する形で、自社のさまざまな事業を、社員が実際に体験し、知ることのできる場としての取り組みも行われた。

  • 配信画面

    TRIBUSから生み出された字幕システムとpiglyphを組み合わせた実際に配信されたプレゼンの様子。発表者の言葉を瞬時に文字とイラストに変換することができる (画像提供:リコー)

これまでものづくり企業は工場での製品製造を中心に、1つの拠点に多くの人が集まって業務をこなしていく、という考えが普通であった。

しかし、このコロナ禍においては工場での実際の製造現場はともかく、多くの職種でそうした一か所に集まる、という考えは通じなくなった。集まることが当たり前だったものづくり企業もそれは例外ではなく、新しい企業の在り方を模索し続けることが求められることとなっている。社員イベントもオンラインで開催するリコーの取り組みもこうした変化の一環と捉えることができるだろう。

山下社長は「コロナ禍の厳しい状況でも人が成長するという事がみえるFoundationDayだった。2036年の創立100周年に向けて私たちとお客様の『"はたらく"に歓びを』を実現していきましょう」と目指すべき方向性を力強いメッセージとして宣言。

OA機器メーカーからデジタルサービス企業への変貌を目指す同社のものづくり企業としての在り方がどのように変化していくのか、その一端が垣間見えたイベントとなった。