TSMCは2月9日、同日開催の取締役会で2020年決算承認や幹部の人事昇進承認など9項目の議題を承認したが、その中の5番目の議題に日本がらみの承認事項が含まれていたことが明らかになった。
当該の議題は「5.Approved the establishment of a wholly-owned subsidiary in Japan to expand our 3DIC material research, with a paid-in capital of not more than ¥18.6 billion (approximately US$186 million)」というタイトルで、3D IC向け材料の研究拡大に向け、日本に100%子会社を設立することを決定したというもので、その資本金は最大186億円を予定しているという。
これまで噂では、経済産業省との合弁会社を設立すると言われてきたが、今回の発表を読む限り完全子会社での設置が正式決定となっている。
台湾の国営通信社CNA(中央逓信社)の英語版メディアFOCUS TAIWANによると「この投資は、この分野の日本のカウンターパートとの協力を強化することを目的としており、投資計画は2021年後半に完了する予定である」としているが、TSMCは今回の発表以上の情報を明らかにしていない。
日本の多数のメディアが本件に関し、さまざまな報道をしているが、その多くは憶測や経済産業省の願望に基づくリークによるものである。一部メディアでは「中国が今後台頭してくるのをにらみ、米国や日本との連携を深めて先端技術の開発を急ぐ」としているが、TSMCにとって中国は米国に次ぐ規模の市場であり、南京の巨大な半導体工場は現在フル稼働状態が続いており、新たなファブの建設も検討されるなど、中国への取り組みも強化しようとしている。
今回のTSMCの取り組みは、FOCUS TAIWANが台湾政府工業技術研究院の識者の話として記している「こうした取り組みを通じ、ライバルであるSamsung Electronicsに対するリードを広げ、グローバルトップの地位を維持することが期待されている」という見方の方が正しいだろう。
TSMCは前工程での微細化だけではなく、後工程のファンアウトウェハレベルパッケージング(FOWLP)技術でも先端を走る企業であり、追いすがるSamsungと激しく競いあっている。