厚生労働省は5日、東京都など5都府県の約1万5000人を対象に昨年12月に実施した新型コロナウイルスの抗体保有率調査結果を発表した。保有率は東京都が一番高く0.91%。東京都の新規感染者は年が明けてから急増し、8日現在の累計感染者数は調査時点のおおむね2倍に達している。このため同省関係者らは、現在の抗体保有率が高まっているのは確実で、12月調査の倍前後になっている可能性もあるとしている。それでも集団免疫ができるとされる60~70%からかけ離れており、同省などはワクチン接種による抗体保有率の向上に期待を寄せている。
厚労省は新型コロナウイルス感染症の広がりを把握するため、東京、大阪、宮城、愛知、福岡の5都府県で昨年12月14~25日、同意を得た一般人を対象に調査を実施した。抗体が検出されれば、症状が出なかった場合も含めて過去に感染したことを意味する。同省は正確に結果を判定するために、2種の検査試薬ともに陽性が確認されたものを「陽性で抗体保有者」とした。
調査の結果、抗体保有率は東京都が0.91%、大阪府が0.58%、愛知県が0.54%、福岡県が0.19%、宮城県が0.14%だった。報告された新規感染者数に基づいて累計感染者数を計算した人口当たりの感染率は、昨年12月7日時点で東京都が0.32%、大阪府が0.26%、愛知県が0.15%、福岡県が0.12%、宮城県が0.06%だったため、いずれの地域でも抗体保有率の方が高かった。
同省や東京都によると、昨年12月の東京都の累計感染者は同月18日に5万人を超え、その後も5万人台で推移し31日に6万人を超えた。年が明けて一気に感染拡大し、1月8日に7万人を超え、2月8日時点の累計感染者は約10万4000人を数える。同省関係者によると、2月に入ってからの東京都の人口当たり感染率は約0.7%(昨年12月7日は0.32%)。このため抗体保有率も昨年12月より高まり、単純計算すると0.91%の倍前後になっている可能性もあるという。
抗体保有率の前回調査は昨年6月に東京、大阪、宮城の3都府県の計約8000人を対象に実施された。東京都は0.1%、大阪府は0.17%、宮城県が0.03%だった。今回の調査結果も感染拡大がある程度収まると指摘される60~70%に比べてはるかに低い数字で、田村憲久厚労相は5日の閣議後記者会見で「集団免疫というような話ではない。引き続き各地域で感染対策に努力してほしい」などと述べ、ワクチン接種による抗体保持に期待を寄せている。
ただし、感染、ワクチン接種いずれによってできる抗体もどの程度の期間保持されるかははっきりしておらず、明確な感染予防効果は国内外の研究でも分かっていない。
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