終身雇用や年功序列といった日本型経営モデルから“能力主義"の時代へと社会が移行している。2020年、ヤフーやユニリーバによる外部人材の募集や大手企業のジョブ型雇用の導入など採用方針が変化を見せている。さらに、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によるテレワーク普及に伴い、副業をはじめとする時間や場所にとらわれない自由な働き方が浸透し始めた。
Piece to Peaceは1月26日、個人がスキルや能力を生かして自由にキャリアを選択する「プロ人材」としての働き方を推進する「日本の企業にプロ契約を」プロジェクトを発足した。同社はプロ人材マッチングサービスを手掛けるCARRY MEを運営している。また同日より、パーソルやパルコなどの賛同企業53社と共に「プロ人材募集」を開始する。
パーソルは、求職者や派遣スタッフ向けのアプリのサービス戦略・マーケティング業務を担当するアプリマーケティングにおける人材を募集する。週2~3日(月50時間程度)の出社で、月額30~70万の報酬を支払うとしている。
またパルコでは、医療・ヘルスケア領域で新規事業の立ち上げにあたって、同領域に特化したマーケティング戦略コンサルタントを募集する。事業内容は事業ターゲットに対する集客戦略策定や、それに必要なネットワーク構築などだ。月1回の社内ミーティングで、月額30~60万円の報酬を支払う。
なお、同プロジェクトが定義する「プロ人材」とは、 企業の課題解決をする為の専門知識やスキルを有し、複数の企業と業務委託契約で働き、成果や業務にコミットする即戦力人材を指している。具体的には、起業家、フリーランス、転職活動中のビジネスパーソンなどだ。
そのほか、ライザップやマネーフォワードなど、大手からスタートアップ、ベンチャー企業まで全53社がプロ人材ポストを公開している。2021年2月下旬に募集を締め切り、3月下旬に契約を進める方針だ。
「重要なのは成果にコミットできる人材かどうかで、学歴は関係ない」と、Piece to Peace代表取締役社長の大澤亮氏は説明した。
Piece to Peaceが全国の会社員を対象に実施した調査結果によると、企業所属で副業・複業もしくは独立願望のある潜在的な「プロ人材」は約300万人に上り、73%の潜在プロ人材がCOVID-19をきっかけに独立意欲が増したと回答している。その理由としては、時間や場所に依存しない柔軟な働き方への希望や、自分から仕事を選ぶことができることに魅力を感じているといったことが挙げられている。
一方で、経験やスキルに自信があるものの、プロ人材としてのキャリアに踏み切れないとするビジネスパーソンも多いという。その理由として、安定収入や手続き業務への不安、セーフティネットの未整備に対する懸念などがあるとのことだ。
こういった課題を解決するために発足された同プロジェクトは、賛同企業とともにプロ人材の募集を開始するほか、個人が安心して調整できるよう、金銭面以外にもスキル取得から案件紹介、福利厚生まで働き方を包括的にサポートする「セーフティネット構想」の構築を推進するとしている。
なお、元日本代表のプロサッカー選手である本田圭佑氏がプロデュースするSOLTILOも同プロジェクトの賛同企業としてプロ人材ポストを用意している。
本田氏は同プロジェクト発足にあたり「これまで日本で良しとされてきた実力主義ではない評価制度が今や足かせとなり、日本はアメリカや中国など勢いのある国に追い抜かれ始めています。企業に寄り添った法律や慣習が変わり、今後は一企業が優秀な人材を縛る事ができなくなる。個にフォーカスする時代へ日本全体が向かっていくことを期待しています」とコメントを寄せていた。
2度目の緊急事態宣言が発令され、新型コロナウイルスの感染拡大の収束の見通しが立たない今、企業のみならず個人の働き方について、考え直す必要があるだろう。