2020年に韓国が日本から輸入した半導体製造用フッ化水素の輸入額は前年比74.2%減の938万ドル相当となったと、複数の韓国メディアが韓国関税庁の貿易統計をもとに伝えている。

輸入額は1000万ドルを下回ったのは2003年以来17年ぶり。2004年に1076万ドルと、1000万ドルを突破して以降、2019年まで1度も1000万ドルを下回ることはなかった。2018年には過去最高となる6686万ドルを記録。2019年は下半期に日本政府が行った輸出管理の厳格化に伴い3634万ドルにまで下げていたが、2020年には1000万ドルを切る水準まで減少したことになる。

関税庁貿易統計によると、2020年に韓国が輸入したフッ化水素の総額は前年比35%減の約7300万ドルで、輸入額全体に占める日本の割合は2019年の32.2%から、12.8%へと落ち込んだほか、中国、台湾、米国からの輸入額のいずれも減少となり、中国からの輸入額が全体の75%を占めることとなったという。

Samsung ElectronicsやSK Hynixといった半導体企業やLG Display、Samsung Displayなどのディスプレイメーカーは日本産フッ化水素の代わりにSoulBrain、RAM Technology、ENF Technology、SK Materialsなど増産を図っている韓国メーカーへの切り替えを進めている。

日本製フォトレジストの輸入額は増加

一方、フッ化水素と同様に、日本政府の輸出管理強化品目に上がったいるEUVリソグラフィ向けレジストを含むすべての種類のフォトレジストに関しては、2020年、韓国は日本から前年比22.3%増の3億2827万ドル相当を輸入した。

韓国のフォトレジスト輸入額総額に占める日本からの輸入額は86.5%を占めており、その存在感をあらわにした形だ。ちなみに、輸出管理の厳格化の対象となっている品目はフォトレジスト全般ではなく、EUV向けレジストやナノインプリント向けレジストに限定されており、現在主流のArF/KrFフォトレジストに対する輸出管理の厳格化はなされてはいない。

韓国政府は、フォトレジストに関しても国産化(海外企業の韓国内製造を含む)を急いでいるが、韓国企業の半導体増産で、需要が韓国内からの供給をはるかに超える状況が続いている。

こうした流れを受けて、東京応化工業は韓国進出を決定。EUVレジストを含むレジストの生産を行うとしている。また、住友化学の韓国子会社もフォトレジスト増産体制を敷きつつあり、DuPontも韓国内にEUVレジスト工場を建設中である。このほか、韓国資本の化学メーカー数社もフォトレジストに参入しているが、需要を満たすまでの生産量に達してはいない。韓国企業は、EUVレジストを日本から輸入するほか、ベルギーのimec/JSR合弁企業からも輸入している。

韓国政府は、フォトレジストに関しても、米中貿易戦争や台湾海峡の緊張、海外政府の輸出規制、新型コロナの感染拡大抑制に向けた国家間の往来規制などさまざまな地政学的な問題を回避し、韓国内で自給自足体制を敷くべく、フッ化水素同様、外資系の韓国現地生産を含め国産化を急いでいる。