IC Insightsの予測によると、2020年における半導体企業による研究開発(R&D)費の総額は、前年比5%増の684億ドルで、2021年も同4%増の714億ドルとなるという。また、2021年から2025年の年平均成長率は5.8%で、2025年には893億ドルにまで増大するとも予想している。
2019年、メモリバブル崩壊のあおりを受け半導体市場はマイナス成長となった。それに伴い研究開発費も同1%減となった。また、売上高に占める研究開発費の割合は14.6%であったという。
2020年の半導体市場は同8%増と好調であったが、半導体各社は新型コロナの影響などもあり慎重姿勢を崩さず、開発費の増加を抑制した結果、総額は同5%増と伸びたにも関わらず、売り上げに占める割合は14.2%となったという。
1970年代以降、研究開発費の絶対額が前年比で減少した年は以下の4年だけである。
- 景気後退期の2019年(同1%減)
- リーマンショック後の2009年(同10%減)
- 「ドットコム」バブルの崩壊による大不況の2001年(同10%減)
- ドットコムバブル崩壊の余波を食らった2002年(同1%減)
2008年から2009年にかけての世界的な景気後退を乗り越え、半導体の研究開発費は2010年から2012年にかけて大幅に回復したが、その後、世界経済に関する継続的な不確実性や歴史的な大型M&Aの連鎖などがあり、2013年以降の研究開発費の伸びは鈍化傾向となっているという。
過去40年の売上高に占める研究開発費の割合の平均は14.6%で、2000年、2010年、2017年、2018年、2020年を除く年で、それを超えているが、この直近5年間で売上高に占める研究開発費の割合が低下している点についてIC Insightsでは、半導体企業の研究開発費の抑制よりも、売り上げが大きく伸びているところによるものとの見方を示している。、
2020年、もっとも研究開発費を投じたのはIntel
2020年、もっとも研究開発費を支出したのはIntelで、業界全体の約19%を占めるという。ただし、コスト削減、一部の製品カテゴリの廃止、および効率の最大化への取り組みにより、研究開発費の絶対額は前年比4%減の推定129億ドルとなったと見られている。この下げ幅は、1990年代半ば以降における同社最大の減少幅だという。
また、2位のSamsung Electronicsの研究開発費は、TSMCと高度なICファウンドリビジネスで競争するために最先端のロジックプロセス(5nm以下)の開発を強化したこともあり同19%増の56億ドル、競合のTSMCも同24%増の37億ドル近くへと引き上げている。
IC Insightsによると、2020年における研究開発費の上位10社(Intel、Samsung、Broadcom、Qualcomm、NVIDIA、TSMC、MediaTek、Micron、SK Hynix、AMD)の総額は同11%増の435億ドルで、業界全体の64%を占める規模だという。