ヴイエムウェアは1月18日、同日付で代表取締役社長に就任した山中直氏とこれまで代表取締役社長を務めてきたジョン ・ロバートソン氏による記者会見を開催した。
冒頭、ロバートソン氏は「ヴイエムウェアには14年在籍したことになる。2015年に社長に就任した時から、5・6年たったら社長の座を譲るつもりだった。山中社長は社員が20人程度しかいなかった15年前から、営業としてヴイエムウェアを支えてきた。ヴイエムウェアのレガシーを引き継ぎながら、新しいビジネスを進めていってもらいたい」と、社長交代の背景について語った。
続いて、山中氏が今後の抱負について語った。同氏は、同社が「サーバ/デスクトップ仮想化」「Software Defined Data Center/Digital Workspace」「Hybrid Cloud/Multi-Cloud」という3段階のステップをへて成長してきたが、現在は新たなステージとして「App Modernization」を迎えていると説明した。
「われわれはサーバの仮想化によって、サーバの抽象化を行い、SDDCによってデータセンター全体の抽象化を実現した。ハイブリッドクラウドとマルチクラウドによって、クラウドとオンプレミスをシームレスにつないだ。そして、今、アプリけーションのモダナイゼーションを実現しようとしている」
アプリケーションのモダナイゼーションを実現することで、抽象レイヤをアプリケーションに引き上げていく。そのために、山中氏は昨年、サーバ仮想化ソフト「vSphere」にの新機能として、Kubernetesを組み込んだと説明した。具体的には、vSphere 7 の新機能として「VMware vSphere 7 with Kubernetes」がリリースされた。
そして、山中氏は「Any Device,Any Application,Any Cloud」「Intrinsic Security」といった同社のプラットフォーム戦略から成る「THE Digital Foundation」を3年間かけて、目指し行きたいと語った。
また、山中氏は顧客企業の成功を支援する柱として、「People」「Process」「Technology」を挙げた。同氏は「われわれは、テクノロジーを届けるだけでなく、カルチャーをどう作っていくかということまで支援していきたい」と話した。昨今、企業がデジタルトランスフォーメーションを進めていく際、テクノロジーだけでなく、企業文化も変えていく必要があると言われている。
さらに、山中氏はヴイエムウェア自体が目指していく方向性についても説明した。同氏はヴイエムウェアに入社する前はNECに所属していたこともあり、ヴイエムウェアにおける自身のアイデンティティとは何かを自問してきたそうだ。同氏は、自分の部署のトップがフランス人になったことで、ヴイエムウェアが米国の企業ではなく、グローバル企業であることを改めて実感したことを踏まえ、今後「日本企業としてのアイデンティティをどう作るか」という課題の下、インクルージョンを進めていくと語った。
そして、グローバルで進めている、ITをよいことに活用する取り組み「Tech for Good」もさらに力を入れていくという。その一環として、フィールド・イノベーション・プログラムを立ち上げて、活動していく。
ロバートソン氏は、外資企業の日本オフィスの社長としては、自身の言葉で率直にかつ熱く語ってくれる珍しい存在だったように思う(それだけ、VMwareではグローバルから見て日本のポジションが大きいのかもしれないが)。それゆえ、取材する側からすると、「ロバートソン節」が聞けなくなるのは若干寂しい気もするが、ヴイエムウェアのさらなる成長のための勇退とのことなので、ロバートソン氏の今後の活躍をお祈りしたい。
なお、今年1月13日(米国時間)、CEOのPat Gelsinger氏が米インテルの8代目のCEOに就任することが発表された。Gelsinger氏は12年ぶりに古巣に戻ることになる。VMwareから見ると、CEOが交代することになる。
2021年はグローバルのCEO、日本オフィスの社長が代わるヴイエムウェア。今後、どのような変化を見せていくのか、期待したい。