花王は、直径1μm以下の極細繊維を直接肌に吹き付け、自然な積層型極薄膜を肌表面につくる技術「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」によりつくられる極薄膜の機能を、肌の保護という観点から解析を行った結果、膜が花粉やPM2.5などといった外的要因を肌に触れさせないのと同時に、肌からでる皮脂を吸着するという機能を有していることを見いだしたと発表した。膜に付着した汚れや過剰な皮脂は、簡単にはがして取り除くことが可能だという。

Fine Fiber Technologyは、同社が紙おむつなどの不織布産業分野で培った技術を応用して、化粧品用のポリマー溶液を専用装置を介してヒトの肌に直接噴射させることで、肌表面に極細繊維の薄膜を形成する技術。2018年の発表以来、肌を覆うと肌表面の水分の蒸散を制御して肌を良好な状態に保つこと、ファインファイバー膜の上にベースメイク化粧料を重ねると、肌の凹凸をカバーしてシミをカバーできることなどの機能を確認してきた。

今回の研究では、ファインファイバーの膜構造が肌を守るのかどうか?という視点から、大気汚染物質や摩擦などの物理刺激からの保護が可能かについての検証を行ったという。

1.ファインファイバーの折り重なった繊維がつくる隙間がPM2.5を補捉

ファインファイバー膜は極細繊維が重なりあった立体構造をしているため、多数の細かな隙間が生じている。この隙間の大きさ(細孔径分布)を測定したところ、その細穴径は概算で1.8μm程度と、PM2.5を捕捉可能なサイズであることが確認できたという。

  • 4極細繊維がつくる立体構造膜の細かな隙間

    極細繊維がつくる立体構造膜の細かな隙間 (出所:花王)

  • ファインファイバーの細穴径と大気汚染物質(汚れ)の大きさの比較

    ファインファイバーの細穴径と大気汚染物質(汚れ)の大きさの比較 (出所:花王)

2.汚れの肌への付着や物理刺激を抑制することで皮膚ダメージを軽減

次に、モデル皮膚上にファインファイバー膜をつくり、その上に花粉、塵・ほこり、黒煙、PM2.5などの大気汚染物質(汚れ)を付着させ電子顕微鏡で観察を行ったところ、これらの大気汚染物質はファインファイバー膜の隙間または膜上に保持されていることが確認されたほか、膜をはがすとモデル皮膚上から大気汚染物質のほとんどをともに除去できることも確認。肌に形成したファインファイバー膜がフィルターのようにはたらき、さまざまな汚れ物質を捕捉して肌に付着させない役割を果たすことがわかったという。

  • 大気汚染物質がファインファイバー膜に付着した様子

    大気汚染物質(汚れ)がファインファイバー膜に付着した様子 (出所:花王)

さらに、肌にファインファイバー膜を形成したときの、物理的刺激(こすれや摩擦など)からの保護効果について、マスクの着用による試験を行った結果、4時間ほど着用した頬であってもファインファイバー膜を形成した肌上では、マスクのこすれや摩擦の影響を抑えることができることが示されたとする。

  • ファインファイバー膜がマスクによるこすれの影響を少なくする様子

    ファインファイバー膜がマスクによるこすれの影響を少なくする様子 (出所:花王)

3.肌から分泌される皮脂の70%を吸着

加えて、これまでの研究からファインファイバー膜は、多孔質の構造により強い毛管力がはたらいていることがわかっており、今回の研究では膜の内側には肌から出る皮脂が吸着されている可能性があると考え、その調査を行ったところ、膜を形成して4時間後の頬の皮脂量は、何もしていない場合に比べて少ないこと、ならびに分泌された皮脂の約70%がファインファイバー膜に吸着されていることが判明したともする。

  • 4時間経過後の肌上の総皮脂量

    4時間経過後の肌上の総皮脂量 (出所:花王)

  • ファインファイバー膜側への皮脂吸収特性

    ファインファイバー膜側への皮脂吸収特性のイメージ (出所:花王)

なお同社では、今回得られた物理的刺激からの保護や余分な皮脂の補足機能などの知見を踏まえ、世界中で高まる大気汚染への意識や増加するマスク着用による肌トラブルに向けて、ファインファイバー膜の新たな活用シーンを提案していきたいとしているほか、新たな商品展開などにつなげていきたいとしている。

ファインファイバー膜の形成から除去までの様子