「IntelのBob Swan CEOは1月14日(米国時間)、全従業員に対し、歩留まりが上がらない製造プロセスの解決方法の決定を延期する可能性があると語った」とIntelの開発・試作ラインがある米オレゴン州の地元メディアThe Oregonianが報じている。
同紙によると2月15日付で正式に新CEOとなるPat Gelsinger氏の就任を待って、同氏に先端CPUの製造をTSMCに委託する否かの判断を委ねる見込みだという。現職のSwan CEOは、2020年10月の投資家会議で、2020年第4四半期の決算発表(2021年1月21日予定)までにその決定を下すと約束していたが、取締役会がCEOの交代を発表したことから、Swan氏は最終判断を後任のGelsinger氏に委ねることにした模様である。
一方のGelsinger氏は、「我々は、クパチーノのライフスタイル企業が作るものよりも優れた製品をPCエコシステムに提供しなければならない」とIntel従業員たちに向かって語ったという。クパチーノにはApple本社があり、同社のことを指し示した模様だ。
同紙はニュースソースとして、14日に開催されたIntelの社内イベントに参加した従業員からの情報に基づいているとしているが、Intelはこの全従業員ミーティングやアウトソーシング計画に関して正式なコメントは出していない。
オレゴン州最大の関心事となっているIntelの動き
Intelがオレゴン州ヒルズボロに有するCPU開発・試作工場は、2万1000人ほどを雇用するオレゴン州最大級の事業所で、しかも工場の設備と保守に毎年数十億ドルを費やしていることもあり、オレゴン州政府や住民にとって、Intelが製造を外部委託に舵を切るか否かが雇用の確保につながることから、最大の関心事となっている。
Gelsinger氏は、30年間のIntel勤務の間、初代CTOとしてオレゴン州でのCPU開発・製造を陣頭指揮し、SVPにまで上り詰めたが最終的にCEOに指名されなかったため、2009年に辞職していた。今回の12年ぶりとなるIntelへの復帰は、Appleを一旦は去ったSteve Jobs氏の復帰になぞらえてIntelの急速な復興に期待をかける論調が米国内で目立つ。
The Oregonianも「Swan氏は堅実なマネージャーだったが、(財務畑出身で)製造を主導するのにふさわしい人物ではなかった。チップアーキテクチャと製造の実際の経験を持つ実績のあるリーダーであるGelsinger氏を復帰させ、会社を新しい方向に推し進めるという取締役会の決定を称賛する」とのアナリストのコメントを紹介している。
Gelsinger氏の報酬は1億1690万ドルか?
なお、同紙では、IntelがGelsinger氏をCEOとして同社に呼び戻す際に、基本給175万ドル、雇用契約ボーナス175万ドル、年間ボーナス最大340万ドル (業績により変動)、無償株式報奨1億ドル相当、株式購入マッチング報奨として最大1000万ドル相当(Intel株式を購入したら同数の株式を無償贈与)の合計1億1690万ドルを提示していると伝えている。