2020年の半導体業界は5件の大きな買収と12件以上の小規模な買収により、M&Aが合意に至った時点の契約額は、2015年に記録した過去最高の1077億ドルをうわまわる1180億ドルとなったとの調査結果をIC Insightsが公表した。
新型コロナの影響もあり2020年上半期の半導体M&Aは3億5200万ドルと低調であったが、7月にAnalog Devices(ADI)がMaxim Integratedを210億ドルで買収するとの発表で一気に動きが出た。
さらに9月に入るとNVIDIAがArmを400億ドルという巨額で買収することを発表。この動きに対し、Qualcomm、Samsung Electronics、MediaTek、Appleなど、Armからプロセッサ技術を活用しているSoCプロセッサ大手各社から懸念が提起されており、そうした懸念を鎮めるためにNVIDIAは、他のICサプライヤやシステムメーカーにIPをライセンスするという点でArmの独立性を維持することを約束した。この買収は2022年3月までに完了する予定だが、米国、英国、EU、韓国、日本、中国の規制当局からのクリアランスを獲得する必要がある。ちなみにArmの地元である英国の合併/買収の調査を行う規制機関である競争・市場庁(CMA:Competition and Markets Authority)は、この件について、公正な競争が阻害されないか調査を開始している。
10月に入ると、今度はIntelが、NAND事業と中国大連の300mmウェハファブをSK Hynixに90億ドルで売却することを発表したほか、AMDがFPGA最大手のXilinxを約350億ドルで買収することを発表。10月末にもMarvell Technologyがシリコンバレーの高速インターコネクトとミクスドシグナルICサプライヤであるInphiを100億ドルで買収することを発表するなど、大型案件が立て続いた。
ちなみにIC InsightsのM&Aリストは半導体企業、事業部門、製品ライン、チップ知的財産(IP)、ウェハファブの購入契約をカバーしているが、IC企業によるソフトウェアおよびシステムレベルのビジネスの買収は含まれていない。そのため、2020年5月にIntelがモバイルアプリケーションソフトウェアサプライヤのイスラエルMoovitを9億ドルで買収した件などは相手が半導体企業ではないため除外されている。このほか、半導体資本設備サプライヤ、材料生産者、チップパッケージングおよびテストを行う後工程企業、デザインオートメーションやソフトウェア企業間の取引も除外されている。
近年の半導体企業による買収の動きは、エッジAIや自動運転車、電気自動車、クラウドコンピューティングサービスのデータセンターの拡大、IoT用センサやシステムなど、新興および高成長分野の市場機会を掴むことを目的に大手IC企業が中心になって進められてきた。
なお、2020年に発表された大型買収案件のうち3つは半導体M&A史上トップ5に入る額で、1位にNVIDIAのArm買収、3位ににAMDのXilinxの買収、5位にADIによるMaximの買収が入るという。同社が調査を行ってきた過去21年間において51件のM&Aが行われたが、そのうち32件は2015年以降に発生しているという。