TSMCは1月14日、2020年第4四半期(10~12月期)の決算を発表した。それによると連結売上高は前年同期比14%増の3615億3300万NTドル、純利益は同23%増の1427億6600万NTドルとなり、ともに四半期として過去最高を記録した。売上総利益率は54.0%、営業利益率は43.5%、純利益率は39.5%だった。
半導体需要の急拡大で2020年12月期(通期)でみても売上高は前年比25%増、純利益も同50%増と大きく伸び、いずれも過去最高を記録した。特に5Gスマートフォン(スマホ)やHPC、サーバ向け半導体などの需要が予想以上に好調だったという。
日本への工場進出は否定も材料研究開発センターの設置を計画
TSMCは業績発表の際に、メディアの質問に答える形で、日本に前工程や後工程の工場建設や合弁企業設立の計画はないとし、経済産業省の要請で日本に後工程ファブ設置を検討しているとの一部の報道を否定したが、日本に材料研究開発センター(仮称)の設置を検討中であることを明らかにした。
具体的にはサプライチェーンの日本側パートナーと共同で3次元集積回路(3D IC)材料を開発するとしており、その場合は、合弁ではなく単独出資する方針だとしている。
ただし、現時点では研究開発センターの設置は最終決定には至っていないとしており、設置場所も決まっていないとしているが、一部のメディアは、経済産業省傘下の産業総合研究所があるつくば市に設置し、日本の装置材料企業や同研究所と共同研究する方向で調整していると伝えている。
また同社は、中国・南京市の前工程工場の拡張について「(一部で報道されているように)能力増強の計画がある」ことは認めたものの、まだ最終決定に至っておらず、中国内の顧客の需要次第だとした。SMICが米国政府のエンティティリストに載ったことにより、受託生産にどの程度の障害が発生するか見極めが必要なうえ、米国のバイデン新大統領の対中国政策を見極める必要があるということだろうと業界関係者は見ている。
稼ぎ頭に躍り出た最先端の5nmプロセス
同四半期の売上高をプロセス別に見ると、5nmが全体の20%を占め、同じく高度なプロセスと定義されている7nmが29%、16nmが13%となっており、16nm以下の先端プロセスが占める割合は全体の62%と過半を超えている。
魏哲家・最高経営責任者(CEO)は「2021年の半導体市場(メモリ除く)は8%成長の見通しで、TSMCの売上高も前年比15%増を見込む」とし、過去最高の更新を見込んでいることを明らかにした。
TSMCの経営陣は現在の市況を踏まえ、2021年第1四半期の全体的な業績を以下のように予想している。
- 売上高は127億ドルから130億ドルの間
- 粗利益率は50.5%から52.5%の間
- 営業業利益率は39.5%から41.5%の間
TSMCのVP兼財務最高責任者(CFO)であるWendell Huang氏は「2021年第1四半期は、HPCの需要増加、自動車セグメントの回復、およびスマホの季節性が近年よりも穏やかになることで、事業が下支えられると予想している」 と述べている。
なお同社の2021年の設備投資は最低で250億ドル、最大で280億ドルを予定しており、台湾と米国を中心に投資を行っていく計画としている。内訳としては投資の8割を、台湾台南市の3nmおよび5nmファブならびに台中市の7nmファブの先端プロセスに振り向けるという。