新型コロナウイルスの国内感染者は昨年12月以降、全国的に急増し、13日に累計で30万人を超えた。この日、厚生労働省に感染症対策を助言する専門家組織は「医療が受けられない事態が発生している」との分析結果をまとめ、日本医師会の中川俊男会長は「全国的に医療崩壊が既に進行している」と危機感をあらわにした。政府は同日午後、緊急事態宣言の対象に新たに大阪、京都、兵庫など7府県を追加することを決めた。国内のコロナ禍は流行「第3波」の勢いに歯止めがかからず、新年早々、深刻な事態になっている。
厚生労働省によると、国内の累計感染者は昨年10月下旬に10万人を超え、2カ月近くを経て12月下旬に20万人に達した。その後わずか3週間あまりで10万人も急増。13日にはクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗船者らを含めて30万人を超えた。感染者の急増に伴い重症者は12日に900人に達して過去最多を更新した。
事態を重視した専門家組織(脇田隆字座長)は13日午前、会合を開き国内の感染状況を分析した。その結果、「対応を続けている保健所や医療機関の職員は既に相当疲弊している」「急速に感染者が増加している自治体では入院調整が困難となったり、高齢者施設などの中で入院待機せざるを得なかったりする例も増えている」「新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難な状況が拡大しつつあり、通常であれば受診できる医療を受けることができない事態も生じ始めている」と結論付けた。
専門家組織に提出された資料によると、医療体制は都市部ばかりでなく、地方でも逼迫が深刻化している。例えば、東京都の場合、人口10万人当たりの1週間の新規感染者数は、昨年12月23~29日は39.6人だったのが、今年1月6~12日には88.9人に急増。受け入れ確保病床数に占める重症者の割合は11日時点で87%に達している。専門家組織は「東京都は救急対応にも影響が出ている」としている。
日本医師会の中川会長は13日午後、東京都内で記者会見し、「全国的に医療崩壊が既に進行している」とした上で「首都圏など非常事態宣言対象地域では既に医療崩壊の状態で、心筋梗塞や脳卒中で倒れた患者の受け入れ機関が見つからない、がんの手術が延期されたということが現実化している」と指摘した。さらに「このまま感染者数の増加が続くと医療崩壊から医療壊滅になってしまう恐れがある」などと強調している。
同会長はこれまでも逼迫する医療現場の実情を定期的に報告してきたが、この日の会見ではこれまでになく厳しい表情と表現で医療現場の惨状を訴えていた。
厚労省のほか、自治体も民間病院などに病床確保を要請するなどの対策を急いでいる。しかし、新型コロナ患者を受け入れるためには病床だけでなく、医療スタッフや医療機材も確保する必要があり、多くの専門家は、救える命を救うためにはまずは感染者を減らすしかない、と指摘している。
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