産業技術総合研究所(AIST)と先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は、2016年度から研究開発を続けてきた「超先端材料超高速開発基盤プロジェクト」の2020年度成果報告会を、Web会議方式で2021年1月12日に開催する。2021年度が同研究開発プロジェクトの最終年度になるため、現行の研究開発成果として2020年度までに達成できた報告会となる。
同プロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合機構(NEDO)からの委託研究開発プロジェクトとして、新しい有機材料系などを高速(短期間)で研究開発する仕組みを確立するために、高度な計算科学を基に人工知能(AI)技術を用いた革新的なプロセス開発を狙って2016年度から5年間にわたって実施されてきたプロジェクト。“超超プロジェクト”とも呼ばれる同プロジェクトは、有機材料系の材料設計プラットフォームの基盤確立を目指してきた技術報告会として注目を集めている。
具体的な成果報告内容としては、先端素材高速開発技術研究組合からは日鉄ケミカル&マテリアルが「高周波対応プレキシブル誘電材料の研究開発」を、パナソニックが「粗視化MDを中心としたマルチスケール計算による電歪ソフトマテリアル開発」を、横浜ゴムが「ハイスループットシステムとデータ科学を活用した高活性ブタジエン合成触媒膜の開発」をそれぞれ発表する予定となっている。
一方、産総研側からは、ナノチューブ実用化研究センターが「深層学習によるCNT膜の仮想実験 組成からの構造・特性予測」と題した報告を行うほか、化学プロセス研究部門からは「混錬、発泡の連続製造のスマートプロセス化構想」、触媒化学融合研究センターからは「固体DNP-NMRを用いる高機能有機材料の構造解析」、物理計測標準研究部門からは「高周波プローブ顕微鏡による誘電率計測と5G-evolution向け誘電率評価」をそれぞれ報告する。
また、同プロジェクトの中核を担った機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センターが「データプラットフォームの位置付けと全体設計」と「データプラットフォーム運用事例 機能性高分子DPF」という全体像を報告する予定となっている。
ちなみに、この最終報告会に先立つ形で2020年9月16日開催の高分子学会において、産総研機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センターが「ソフトアクチュエーターの材料の大変形を左右する分子構造を特定する手法を開発」を発表しており、プロジェクトの有効性を事前に公表する形で材料開発面における注目を集めていた。
なお、先端素材高速開発技術研究組合は出光興産や宇部興産、カネカなどの企業18社で構成されている。これに大阪大学や九州工業大学、物質・材料研究機構などの大学など12機関が産総研からの再委託を受けて参加する形で研究開発体勢が構成されている。