市場調査会社TrendForceによると、2021年の自動車出荷台数は新型コロナウイルス感染症の影響から脱し、需要が徐々に回復、その結果8350万台に達すると予測され、需要が増加するのに伴い、車載IC市場も同12.5%増と2桁の伸びが期待されるとの予測を明らかにした。

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    車載IC市場の推移 (出所:IC Insights、2020年12月)

2020年の車載IC市場は米中貿易戦争や新型コロナウイルス感染症の影響による一時的な工場の操業停止や、外出を控えるようになったことからの自動車購入そのものの需要減少、サプライチェーンの混乱による自動車メーカー各社の新モデルリリースの延期などの影響を受けるなど、厳しい課題に直面している。その一方で、主要な自動車向け半導体の提供企業は、自動車用半導体の開発や認証に必要な期間が長いこともあり、そうした状況でも積極的に研究開発活動を行っているという。

さらにこうした半導体企業は、自動車メーカー独自の認証基準も満たす必要もあることから、他社に先んじて要求される機能・性能を有する製品を開発・提供することで、2023年以降にリリースされる新車のサプライチェーンに入り込む可能性が高くなり、結果として市場を拡大することができるようになる。こうした動きに対応する例としては、5nmプロセス採用プロセッサ開発に向けたNXP SemiconductorsとTSMCのパートナーシップや、STMicroelectronicsとBoschが共同で開発した自動車用マイクロコンピュータなどが挙げられる。また、買収という手もあり、例えばInfineon TechnologiesがCypress Semiconductorを買収して得たNORフラッシュやマイコン製品は、Infineonの車載半導体のポートフォリオ拡大につながったという。

車載半導体のトレンドとしては、V2X、ADAS、自動運転、電気自動車といった分野が成長のドライバとなっている。自動車メーカーも積極的に先端プロセスの採用に動いているが、勝ち残れるか否かはパワー半導体の生産能力の管理にかかってくる可能性が高い。というのも、現在、半導体産業全体でファウンドリの生産能力不足に直面しており、これは短期的に解決される問題ではなく、車載半導体市場も同様であるとTrendForceでは見ている。ファウンドリからの供給が予定通りに行かないことを踏まえると、自社ファブを持つIDM各社は、タイムリーに製品の提供が可能であることから、自動車メーカーからの要望に応えやすく、今後、他社に比べて優位なポジションに立つ可能性があるとしている。