身体に不調があっても、どこの医療機関に受診すればよいのか、はたまた医師に診てもらうべきなのか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する脅威から、医師に診てもらうことを控え、症状を悪化させてしまう、いわゆる「受診控え」による重症化も問題視されるようになっている。
こうした社会課題に対し、Ubieは神奈川県海老名市、海老名市医師会、海老名総合病院などと協力して、20問程度の質問に回答すると、AIがその症状や位置情報に基づき、可能性のある病気を判断。近隣の受診先などを表示してくれる「AI受診相談システム」の活用を2020年12月9日より開始した。
同システムは、Ubieの提供する「AI問診ユビー」ならびに「AI受診相談ユビー」でも利用している問診エンジンを活用し、適切な受診先を提示したり、ガイドラインに基づく発熱などのCOVID-19が疑われる症状がある場合は、海老名市の特設コールセンターに案内したりすることで、受診控えによる重症化リスクを低減することを可能としようというものとなっている。
AI問診ユビーは、2018年8月より提供を開始したすでに41都道府県で約200の医療機関が導入している医療機関向けAIサービス。医師と患者が対面による口頭問診の前に20-30問の質問をタブレットやスマートフォン(スマホ)で答えるだけで、問診に必要なすべての情報を、医師向けの言語に翻訳された問診結果を医師に文書化した状態で届けるほか、AIが問診結果に基づいた参考病名を辞書的に提示、それに対し、医師が選択した病名にチェックを入れることで問診精度を向上するといったことも可能となっている。
さらに、最近ではCOVID-19対策として、疑わしい症状が出たら、それを踏まえたアラートを出して、適切な処置を促すといったことも可能となったのことで、こうしたデジタル化により、あるクリニックでは、外来の問診時間を1/3に短縮することができたという。
一方のAI受診相談ユビーは、AI問診ユビーをベースに、質問結果を踏まえ、家庭でどういった医療機関や相談先に行けば良いかを教えてくれる医療のかかり方支援アプリ。AI問診ユビーとも連携しており、AI問診ユビーを導入している医療機関に行く場合は、事前にAI受診相談ユビーで得られた問診データが医療機関側に送られ、それを元に診察を受けることもできるようになっている。
海老名市の場合、海老名総合病院のほか、蛯名メディカルプラザなどで導入されており、そうした医療機関であればスムーズな連携が可能となっている。Ubieでは、現在は急性期医療の提供が可能な医療機関が中心だが、今後は市井のクリニックでの利用に向けたサービスの最適化も進めているとのことで、こうした取り組みを踏まえ、さらに多くの市内の医療機関との連携を図ることで、地域医療連携を強化し、多くの海老名市民により最適な医療機関を案内できる仕組みを整えていきたいとしている。
現在、同社のAI問診の対象となる疾患数は1104ほど。主に内科の疾患を中心としているが、神経内科や外科、整形外科、産科・婦人科、耳鼻咽喉科など、幅広い診療科目に対応しているが、今後もさらに対応症状を増やしていくとするほか、製薬企業との協業も進めており、最新の治験の状況などを参考情報として医師に提示するといったことも将来的にはできるようになる予定だという。 また、海老名市と協力して進めようとしている取り組みについて、同社は地域医療連携を進めるための重要な一歩だとの見方を示しており、ここでの成功を糧に、近隣地域との地域間医療連携などにつなげていきたいともしている。
とはいえ、現状において海老名市のすべての医療機関で同システムが導入されているわけではない。そのため、今後はより多くの医療機関に参加してもらうべく、同社でも海老名市、海老名市医師会、海老名総合病院などと協力して働きかけを行っていくことで、地域医療連携の強化を図っていくことができれば、としている。