昨年、総務省による第二期政府共通プラットフォームがAmazon Web Servicesのクラウドサービス上で運用を開始したが、同社はグローバルで公共分野のビジネスを強化している。
そこで今回、年次イベント「re:Invent 2020」で発表された公共分野のパートナープログラムを中心に、バイスプレジデントとして、世界中のパブリッセセクター部門におけるクラウド活用をサポートしているSandy Carter氏に話を聞いた。
メインフレームのクラウドへの移行を促進
Carter氏によると、AWSの公共部門のパートナーは右肩上がりに増えており、AWS Public Sector Partner Programに参加した企業は前年比45%増を達成しているという。「re:Invent 2020」では、公共部門の新たなパートナープログラムがいくつも発表されたが、同氏は注目すべきプログラムとして、初めに「AWS Mainframe Migration Competency」を挙げた。同プログラムは日本を含めて、グローバルでまだ正式に提供が始まっていない。
同プログラムは、メインフレーム環境をAWSに移行できるAWSパートナーの実績を評価・認定することで、メインフレームからAWSへの移行を促進することを目的としたものだ。
以前より、グローバルの企業と比べて、日本の企業はメインフレームの利用が多いと言われているが、グローバルでのメインフレームの利用状況はどのようなものなのか。Carter氏によると、Fortune 500企業の70%以上が依然としてメインフレームでビジネスクリティカルなアプリケーションを実行しており、メインフレームのトランザクションは1日300億にも上るという。
「AWS Mainframe Migration Competency」のパートナーはテクノロジー分野とコンサルティング分野に分類できる。テクノロジー分野においては、Micro Focus、Blu Age、Advanced – Modern Systems、TSRIが既にパートナーとしての資格を持っている。また、コンサルティングに関しては、Infosys、Deloitte、Tata Consultancy Servicesが既にパートナーとしての資格を持っている。
公共部門のエネルギーにまつわる課題も支援
また、「re:Invent 2020」において、2021年に正式提供が始まるパートナープログラムとして「AWS Energy Competency Program」も発表された。これは、エネルギー業界を支援するプログラムだ。
現在、企業は温室効果ガスの排出を抑制するためにカーボンフットプリントに取り組むこと、SDGsの一環として再生可能エネルギーを利用できるようにすることが求められている。
AWSのパートナーは、AWSのクラウドサービスを活用して、生産工程の最適化、パイプライン操作、太陽光と風力の再生可能エネルギー発電の最適化に取り組んでいるという。
Carter氏は日本市場にとって重要なパートナープログラムとして、「AWS Public Safety and Disaster ResponseCompetency」を紹介した。これは、公共安全や災害対応に関するプログラムで、2019年の「re:Invent」で発表された。
これまで、同プログラムはAWSコンサルティングパートナーのみを対象としていたが、今回、関連するソリューションの準備・導入・復旧可能なテクノロジーパートナーを追加した。具体的には、AWSを利用した接続サービスAPIの形式で、地図と経路探索データを提供する。
そのほか、「re:Invent 2020」では、公共部門のパートナーが人工知能(AI)と機械学習(ML)の迅速な導入を支援するためのイニシアチブ「AI and ML Rapid Adoption Assistance Initiative」が2021年にはグローバルで利用可能になることも発表された。
パンデミックの影響によるリモートワークのセキュリティにも対応
さらに、Carter氏はパートナーのトランスフォーメーションとセキュリティにまつわる取り組みを紹介した。前者は、「AWSパートナートランスフォーメーションプログラム」によってサポートする。同プログラムについて、「AWSのプラクティスを活用して、収益性の高いクラウドのプラクティスを立ち上げるためのもの」と、Carter氏は説明した。
AWSのプラクティスはガバナンス、テクノロジー、カルチャーなど100のステップから構成されており、スピーディーなクラウドへの移行を実現するという。
「AWSパートナートランスフォーメーションプログラムを利用しているパートナーと利用していないパートナーとでは、25%の収益の差がついている」とCarter氏。
セキュリティに関しては、「新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、サイバー攻撃は前年比400%増を超えている。そのため、われわれは、サイバー攻撃を『プライオリティゼロ』の課題と呼んでいる」と、Carter氏はいう。
同社は顧客の声を聞いて、セキュリティソリューションを打ち出しているが、昨今は、在宅勤務が増えていることから、リモートワークとWebポータルのセキュリティ対策が求められているそうだ。「パートナーが容易に導入できるように、われわれは反復可能なパッケージを用意している」とCarter氏。これらのパッケージを導入することで、「FedRAMPなどの米国政府のトップレベルのセキュリティを適用することが可能になる」と、Carter氏はアピールしていた。