SEMICON Japan 2020 Virtual併催のSEMIマーケットセミナにおいて、SEMI米国本部で市場調査統計担当ディレクターを務めるClark Tseng氏が「2020年末時点での半導体製造装置材料市場予測」と題して講演し、SEMICON West 2020で公表した半導体材料市場に関する予測のアップデートを行った。

半導体材料市場は、ウェハファブ装置およびパッケージング装置が好調であった2018年に500億ドルを突破。2019年はわずかにマイナス成長となったが、2020年は前年比2%増の539億ドルとなるとSEMIでは2020年12月時点の予測を示している。7月に開催されたSEMICON Westでは、同0%の横ばい予測であったので、この約半年の間で上方修正がなされたこととなる。また、2021年は同5%増の566億ドル、2022年も同4%増の589億ドルと、今後も緩やかだが、順調に成長が続くと予測している。

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    図1 半導体材料市場の推移。ウェハファブ材料は緑色、パッケージング材料は黄緑色で表示 (出所:SEMI、以下すべて)

半導体材料の最大の消費地域は台湾

半導体材料の消費を地域・国別に見ると、2020年~2022年の間は、少なくとも台湾、中国、韓国、日本、米国、欧州という順に変動はないとみられる。

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    図2 2021年における半導体材料の消費地域・国別内訳予測と2020年~2022年の半導体材料市場の消費地域・国別内訳予測

また、ウェハファブ(前工程)における装置/プロセス別の材料市場を見ると、2020年の全体市場の規模は同2%増、2021年も同4.6%増と成長が続き、2021年には350億ドルに達するとSEMIでは予測している。中でも最大市場はウェハ市場で、2020年は価格圧力に悩まされ、前年比マイナス成長となったが、2021年以降は出荷数量、価格面ともに改善がみられると期待されるという。さらにフォトマスク、ウェットケミカル、フォトレジスト、付帯設備関連などの市場での成長も期待されるとしている。

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    図3 2019年~2022年のウェハファブ(前工程)材料市場の品種別販売額内訳予測 (単位:10憶ドル)

2020年に急回復したシリコンウェハの出荷数量

2020年のシリコンウェハの出荷数量は第1四半期から第3四半期までの間で前年同期比2.7%増と増加した。特に第2四半期は各種の需要増と、在庫積み増しの思惑が重なり、前四半期比8%増と伸びた。ただし、第3四半期に入ると、メモリ用ポリッシュドウェハの需要が少なかったために、前四半期比0.5%減と若干の減少となった。

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    図4 四半期ごとのシリコンウェハ出荷面積(単位:百万平方インチ)

ウェハの出荷数量を口径別に見ると、いずれも2019年に前年比で減少したものの、2020年から2022年にかけて成長が続く見通しで、2020年は前年比2.4%増、300mmウェハのみに限れば同6.5%増の伸びが予想されている。また、300mmウェハは2021年に同5%増、2021年にも同5.3%増とのび、史上最高の出荷数量を記録する見通しだという。さらに、150mmウェハならびに200mmウェハの出荷数量も2021年ならびに2022年ともに同5%近い成長率が期待されるとしている。

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    図5 ウェハの口径別出荷面積の推移予測 (単位:百万平方インチ)

一方の2020年のパッケージング(後工程)向け材料市場は、前年比2.4%増と予想されているほか、2021年はHPCならびに5Gでの先進パッケージング導入が進むほか、2020年に伸び悩んだリードフレームも同5%増との見通しから、全体としては同8%増の成長が期待されるという。

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    図6 2019年~2022年のパッケージング(後工程)向け材料市場の品種別販売額内訳 (単位:10億ドル)

半導体製造装置市場の成長を妨げるリスクは何か?

米国の商務省や国防総省から制裁措置を受けているSMICは、世界のファウンドリの生産能力の約7.5%を占めており、200mmに限れば約9%を占める規模である。また、同社のWFE市場での半導体製造装置の購入率は7.5%だが、同社の2021年の設備投資は著しく減少するとSEMIは見ている。ただし、同社は、米国以外で協力してくれる半導体製造装置サプライヤを探しているので、米国以外の半導体装置材料メーカーにとってはビジネスチャンスが到来する可能性もある。こうした動きは不透明感が強いため、半導体製造装置ならびに材料業界にとって実際どのようなインパクトがあるかSEMIも精査を進めている段階にあるとするにとどめている。

また、こうした米国政府の中国への規制強化は、電子機器のサプライチェーンにも不確実性をもたらしているともする。例えば、Huaweiへの制裁は、サプライチェーンに短期的なインパクトを与えるだろうが、市場は数四半期以内に落ち着きを取り戻すとSEMIでは見ている。また、このHuaweiへの制裁は、主な中国メーカーの国産化を促進することにつながり、テクノナショナリズムが台頭し、その結果、半導体産業もサプライチェーンの自国内での完結やデカップリングが加速するとの見方が示された。

なお、Tseng氏は、半導体製造装置ならびに材料市場の今後について、以下のように結論を述べている。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大や米中貿易紛争の先行き、地政学的な緊張(米中、中印など)、米大統領選の最終決着など不透明感が漂っており、将来の不確実性が増している。米国政府による中国企業への制裁が長引けば、半導体製造装置・材料業界に悪影響を及ぼす可能性が高い。
  • SEMIは、2021年の電子機器やICの販売に関して肯定的にとらえている。データセンタ、HPC、およびAIが相変わらず業界のけん引役を担っている。ラップトップやサーバ需要の強さは2021年も継続することが期待される。5Gの普及は2020年はあまり進まなかったかもしれないが、長期的な見通しは明るい。政府の大規模な景気刺激策によって景気は引き続き回復するとみられる。
  • 半導体製造装置ならびに材料市場は、2021年に大きく成長することが期待される。