インターネットイニシアティブ(IIJ)は12月23日、農林水産省が推進を目指す農業農村における情報通信環境の整備に取り組む市町村などの自治体や土地改良区向けに、ため池や用水路など水利施設の水位を遠隔監視・管理するセンサおよび目視監視用静止画カメラを開発し、2021年1月5日から提供開始すると発表した。これらのセンサやカメラは、省電力で電波伝播距離が広範囲な無線技術LoRaWAN(低消費電力かつ長距離通信を特徴とするIoT/M2Mに適した無線通信技術)に対応しており、無線基地局に複数のセンサを接続して地域で共同利用する仕組みも併せて提供し、農業農村地域での低コストな通信インフラの構築を支援する。

従来からIIJは、自社のネットワーク、クラウド、セキュリティ技術を活かし、主に産業、農業、ホーム・見守り、エネルギーの分野において、IoTソリューションを提供している。

農業分野では静岡県で実施した3年間のスマート農業に関する実証プロジェクトで水田水位管理センサを開発したほか、現在は北海道、岐阜県、大阪府などのスマート農業実証プロジェクトで、リモートセンシングや無線通信技術に関する知見を活かし、地域のニーズに合った技術的支援を行っている。

そこで、同社は農業向けIoT技術を体系化し、現在提供しているLoRaWAN対応の水田用水位センサを応用することで、ため池や用水路などの水利施設向けの水位センサと目視監視用のカメラを新たに開発。LoRaWANの電波は数kmと広範囲に伝播するため、台風や豪雨時に現場に行くことなく、遠隔からスマートフォンなどで現場の状況を監視できるという。

同社では併せて、センサからデータを収集するための通信インフラを低コストで運用できるよう、無線基地局を地域で共同利用するためのデータ集約プラットフォームを提供し、スマートフォン向けの汎用アプリを同社から提供するほか、プラットフォームを介して他社のアプリケーションとのデータ連係も可能となる。

用水路向け水位センサは水田用水位センサの技術を応用し、用水路の水位を60cmまで1cm単位で測定できる。台風や豪雨時に現場に行くことなく、用水路の水管理をスマートフォンやタブレットなどのデバイスで確認することができ、水位のほか水温のデータも管理を可能とし、価格は税別で5万1000円。

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ため池・河川向けフローティング式水位センサは、フローティング方式のセンサを用いており、最大3段階までの水位を遠隔で計測することが可能。水深10mまでのため池や大型の用水路向け水位センサとなり、単3電池で約1年稼働し、価格は税別で15万1525円。

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作物や施設の目視監視向け静止画カメラは、作物の生育や設備の監視など目視監視が必要な対象物を定点観測できるカメラで、10分間隔で静止画を撮影し、画像を送信。LoRaWANは大容量データの送信に不向きだったが、データを超高圧縮し分割転送することで、画像送信を可能にしており、通信費を抑えた目視監視ができ、用途に応じて暗視撮影や高解像度画像の撮影にも対応できる。価格は税別で15万円。

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これらのセンサやカメラはLoRaWANに対応することで通信コストを抑え、安価なランニングコストでの運用が可能。また、多種多様なセンサで同じ通信インフラ(基地局)を共有することで、水利施設の管理以外にも施設園芸、見守り、防災システムなど多用途に展開することができるという。

同社では、自治体や土地改良区が地域で通信インフラを整備する際、適切なエリア設計やシミュレーションなど、導入に向けた具体的な課題解決や無線基地局の整備設計についても支援していく方針だ。