IDC Japanは12月22日、デジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査の国内と世界の比較結果を発表した。これによると、国内企業のDXは急速に進み、社内体制や予算措置なども世界の企業に追いつきつつある一方で、DXを顧客エクスペリエンスに役立てる、デジタルを活用したビジネスの拡大を目指す、といった姿勢については、世界の企業との間に差のあることが分かったという。
IDCでは、DXを実践している国内および世界の企業に対して、その実施内容、課題、KPIなどをアンケート調査形式で質問する「IDC DX Sentiment Survey」を実施しており、今回の調査レポートはIDC DX Sentiment Surveyの国内と世界の結果を比較し、国内企業のDXの状況について分析した。なお、国内の同調査は2020年にも行われたが、日本以外では行われていないため、今回は変則的に2019年における世界の調査結果と2019年、2020年における国内の調査結果の3つを比較した。
調査レポートによると、日本と世界の企業/組織におけるDXの適用業務では「IT/情報システム」、「業務オペレーション」「戦略策定」「マーケティング」の項目が、どの調査結果を見ても比較的高い状況であることが判明した。
一方で「顧客エクスペリエンス(Customer Experience:CX)」については、国内企業の回答比率は世界と比較して低く、15ポイント以上の差になっている。これからCOVID-19の感染拡大を経て、企業と顧客とのエンゲージメントがバーチャルなものになっていくに従い、国内企業においてもいかに顧客エクスペリエンスを高め、顧客1人あたりのライフタイムバリューを高めていくか、といったことが最重要視されるようになると同社ではみている。
また、DXの課題については「イノベーションのサイロ化」「サイロ化されたDX推進」の項目が、国内および世界で同様に高い回答率となっている。その一方で、国内と世界で差の大きい項目として「戦術的な計画」が挙げられ、2019年の世界の結果では50.9%の企業が課題としているのに対し、国内では31.5%に留まっている。
個々のプロジェクトが長期的、戦略的な計画とは別に(あるいはそれなしに)進められる場合、戦術的な計画はサイロ化の原因になると考えられ、世界の企業においてはサイロ化とともに戦術的な計画に対する課題認識が、国内企業に比して高い状況にあるという。国内企業は、DXを進めていくにあたり、サイロ化の根本にある長期的、戦略的な計画の立案にも目を向けていく必要があると同社ではみている。
国内企業のDXの取り組みにおいては、世界の企業との差が全般的には縮まっていると言える一方で、顧客エクスペリエンスのような項目では差を感じざるを得ない状況にある。
同社のITサービスグループ リサーチマネージャーである山口平八郎氏は「国内企業のDX推進体制は、すでに世界の趨勢に追いついている。COVID-19の感染拡大で社会情勢や顧客との関わり方が変わる中、国内企業はそういった社内DX体制をベースに、より『攻めのDX』へと軸足を移し、『次の常態(ネクストノーマル)』における勝者の道を探っていくべきである」と分析している。