R-Carシリーズの最上位品となるSoCが登場
ルネサス エレクトロニクスは12月17日、車載SoC「R-Carシリーズ」の最上位品として1チップでASIL-Dをサポートし、ADASや自動運転の高度化を可能とする「R-Car V3U」を発表した。
同製品は「Trusted」「Innovative」「Open」の3つのキーワードのもと、ADAS/自動運転の高度化を目指し開発されたもの。デュアルコア・ロックステップに対応したArm Cortex-A76を4コア(ロックステップを解除した場合は8コア)とArm Cortex-R52を1セット搭載しているほか、GPUにImagination Technologies(IMG)のPowerVR Series7の「GE7800」、独自の画像認識エンジン「IMP-X5-V3H」の改良版を4コア搭載、メモリも最新世代とも言えるLPDDR4X-4266に対応させつつも、これらチップに搭載されているすべての機能をASIL-Dに対応させている点が特徴となっている。
また、R-Car V3Hでも採用されていた専用のCNN(Convolution neural network)-IP(ハードIP)も最新版に強化したほか、内部バスを強化した専用メモリを6MB搭載することで実行効率の向上を果たした。また、ネットワークタイプとして、より小さなサイズへの対応を可能とし、高効率化を実現したことで、システムレベルとしては空冷の消費電力で60TOPSを提供することを可能としており、同社では消費電力あたりのTOPSの値は競合製品を上回っていることを強調する。
高性能化と多機能化を1チップで実現したことで、同製品はディープラーニングを用いた車載カメラが撮像した画像をもとにした物体認知とレーダーやLiDARとのセンサフュージョン、ならびにその後段の走行計画の立案から制御指示までを1チップで実現することが可能となったという。そのため、システムとして考えた場合、チップ数を減らせるため、自動車メーカーやティア1の考え方もあるが、複数のECUやSoCで構成されていたものを、よりシンプルなものに代替することができるようになるとする。
第4世代への橋渡しとなるR-Car V3U
同社はこれまでR-Carシリーズとしてアルファベット+数字の組み合わせの数字の部分(今回の場合は“3”)をR-Carの世代として表記してきた。今回のR-Car V3Uも第3世代に位置づけられるが、実際の意味合いとしては第3世代の最終版、第3.5世代ともいえ、第4世代への橋渡し的な製品と説明しており、今後登場してくるであろう第4世代R-Carの起点となる存在に位置づけられているようである。
そのため、採用したプロセスはTSMCの12nm。R-Car V3Hが16nmなので、プロセスのシュリンクは進んでいるが、先端とまでは言えないところでとどまっている。すでにTSMCは7nm、そして5nmプロセスの提供を開始しているが、R-Car V3Uが量産車に搭載されると見られている2023年ころでようやくそうした先端プロセスはさまざまな面でこなれてくるものとみており、第4世代以降にそうした1桁nmのプロセスが採用されることになりそうである。
すでにスターターキットも提供可能
R-Car V3Uはすでにサンプル出荷を開始(量産は2023年第2四半期を予定)しており、基板に搭載された状態のスターターキットもリードカスタマを中心に提供を開始。日本でも同社もしくは同社の販売代理店より入手が可能な状態となっているという。
また、同社では自動車の開発に携わる人たちに安心して使ってもらうことを目指しているとしており、国内外に幅広いジャンルのパートナーを有するR-Carコンソーシアムを活用していくことで、より使いやすいソリューションを提供していき、ユーザーの開発効率向上につなげていきたいとしている。
なお、今回搭載されたCNN-IPの技術の詳細については、2021年2月に開催される予定のISSCC 2021で発表される予定だという。