日本学士院は14日、リチウムイオン電池を開発した研究業績により2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェローら10人を新会員に選んだ。学士院会員は、優れた業績を上げた研究者の中でも特に顕著な功績を上げた人が選ばれる特別職の国家公務員。任期は終身。会員は計139人となった。
日本学士院の新会員の名前(敬称略)、肩書、専攻、主な業績は次の通り。
【第1部 人文科学】
・高田康成=東京大学名誉教授/名古屋外国語大学名誉教授、英文学・西洋古典学。包括的かつ体系的な「西洋学」の基礎固めに尽力した。
・金水敏=大阪大学大学院文学研究科教授/人間文化研究機構国立国語研究所客員教授、日本語学。日本語における存在表現の歴史的変化を解明した。
・伊藤眞=東京大学名誉教授、民事訴訟法。民事訴訟法における判決手続きと倒産手続きの両分野で学界だけでなく、裁判実務や立法に大きな影響を与える業績をあげた。
【第2部 自然科学】
・柳田敏雄=大阪大学栄誉教授・名誉教授/大阪大学大学院生命機能研究科・情報科学研究科特任教授/情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センター長/NECブレインインスパイヤードコンピューティング協働研究所長、生物物理学。不可能だった溶液中でのタンパク質の動きを1分子レベルで観察することに成功した。
・家正則=自然科学研究機構国立天文台名誉教授/総合研究大学院大学名誉教授、天文学。米ハワイ島のすばる望遠鏡の建設計画に貢献し、完成後には130億光年の初期宇宙を観測した。
・金出武雄=米カーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授/京都大学高等研究院招聘特別教授/産業技術総合研究所名誉フェロー、情報学。コンピュータービジョンと知能ロボット工学の先駆的研究を進め、その基礎理論と応用に多大な貢献をした。
・吉野彰=旭化成名誉フェロー/産業技術総合研究所フェロー兼エネルギー・環境領域ゼロエミッション国際共同研究センター長/名城大学大学院理工学研究科教授・特別栄誉教授/技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター理事長/九州大学グリーンテクノロジー研究教育センター訪問教授・栄誉教授、電気化学。従来の鉛電池やニッケル水素電池より小型で軽く、高い電圧をもち、安全性の高いリチウムイオン電池を発明。多くの分野での科学技術の進歩を通じ社会に大きく貢献した。
・西澤直子=石川県立大学学長/東京大学名誉教授/石川県立大学名誉教授、植物栄養学。イネ科植物が持つ鉄栄養獲得とその制御の分子機構を明らかにするなど高等植物の分子レベルでの栄養学研究に先導的役割を果たした。
・大塚榮子=北海道大学名誉教授/産業技術総合研究所名誉フェロー/北海道大学新渡戸カレッジフェロー、薬化学。核酸やタンパク質の構造と機能の解明で先駆的研究を進め、がん遺伝子の全合成を達成、がん遺伝子タンパク質の立体構造を解明した。
・宮下保司=東京大学名誉教授/順天堂大学大学院医学研究科特任教授/理化学研究所脳神経科学研究センター高次認知機能動態研究チームチームリーダー、生理学。ヒトでのみ探求可能とされてきた高次精神機能を実験的に解明するために、ヒト以外の霊長類でも遂行可能な心理実験課題を開発、その脳内機構を生理学的に解析する道を開拓した。
(写真はいずれも日本学士院提供)
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