日本NPOセンター、Code for Japan、ETIC.、NTTデータの4者は12月15日、非営利団体(NPO)のIT利用状況に関する全国調査の結果を発表した。これによると、NPOは多方面でのIT利用に意欲的だが、人数・質の両面でIT人材が不足しており、STO(ソーシャル・テクノロジー・オフィサー)に対する具体的なニーズがあることが明らかになったという。一方、資金面やIT利用に対する理解へのハードルの高さも見られたとのこと。
同調査は20年9月2日~30日にかけて、対象団体にダイレクトEメールで調査協力を依頼しオンラインでアンケートに回答してもらう形で実施したもの。有効回答団体数は1326団体。
事業活動におけるIT利用の現状を見ると、「インターネットを通じた広報の強化」「団体Webサイトの改善・機能強化」「オンラインでのセミナーや研修・体験、相談対応など」が中心だった。
将来的には、「オンライン教材の開発・導入」「オンラインでの会話・相談等の自動応答の開発・導入」「情報伝達に配慮が必要な方のサポート」「モバイルアプリの開発・導入」など、より多様な利用方法や、より細分化した課題解決に向けた利用に高い関心があることがわかる。
組織運営におけるIT利用では、現時点は「データ・書類の保存、共有」、「会計」「寄付者・会員管理」「テレワーク」が中心だった。将来的には、テレワークの進展を見越した各スタッフの業務の可視化や、業務効率の向上に向けた電子契約での利用を期待している。
IT関連の人材では、回答団体の7割を占める年間総支出予算規模5000万円未満の団体において、ITの有給職員がいる団体は3割にとどまっている。しかも、そのうちの7割の団体が、人数と質ともに人材が不足していると答えている。
IT人材の人数と質を確保できない理由について、4割の団体が原資や予算の不足を、2割が事業活動や組織運営でのIT利用に関する情報や知識の少なさを挙げている。少ない予算の中でIT人材への投資には限界があると、4者は指摘している。
団体内部の人材としてのSTOの利用意向を尋ねると、.4割の団体が利用したいと回答した半面、3割が「わからない」と回答した。4者は、「わからない」と回答した団体向けの周知および理解浸透活動の必要性が確認できたとしている。
STOに期待する役割では、6割が「組織の事業・運営を向上させるIT活用の提案」、4割が「IT活用のコンサルティング・助言」、同じく4割が「活用するIT技術の選定」と回答した。経営視点でIT利用をアドバイスするSTOへの期待があると、4者は分析している。
今後4者は、NPOとSTOのマッチングを促進するために、STOの発掘やNPOのIT利用の促進に向けたセミナーを行う。行政や企業に対しては資金支援や人材支援を働きかけ、社会の中でSTOが活躍できる基盤づくりや環境整備を推進していく方針だ。