日本マイクロソフトは12月15日、IDC Asia/Pacificと共同で実施した調査「イノベーションの文化:アジア太平洋地域における強靱なビジネスと経済回復のための基盤」の結果を発表し、それに向けた支援策として就労支援に向けたデジタルスキル習得施策「グローバル スキル イニシアチブ ジャパン」(GSI-J)を開始すると発表した。
IDCとの共同調査は、アジア太平洋地域の15の国と地域における、従業員250名以上の組織を対象に、フェーズ1(2019年12月~2020年1月)とフェーズ2(2020年7月)の2回にわたり実施した。
日本からは、経営者のべ323名、従業員341名が参加している。
調査結果によれば、「危機に強い事業運営には、イノベーション文化が不可欠」と認識している経営者の割合は、アジア太平洋地域では98%であるのに対し、日本では69%で、ニューノーマルに向け、デジタルトランスフォーメーションを加速する企業の割合は、アジア太平洋地域のイノベーション文化が成熟したリーダー企業では87%である一方、日本では55%だったという。
また、日本の企業は、新たな労働環境での効率的な業務に向けた従業員の技能向上や再教育を中心に施策を行っている一方、アジア太平洋地域のリーダーたちはスケーラブルでより柔軟性を確保しやすい堅牢なテクノロジインフラに投資を行う傾向にあるという。
ニューノーマルに向け、デジタルトランスフォーメーションを実現するには、ツールやテクノロジの採用に加えて、組織の個々人が、ツールやテクノロジを正しく活用し、それを支援する文化を醸成する必要があり、マイクロソフトでは、これをTech Intensity(テクノロジの強度)と呼んでおり、イノベーション文化において重要な役割を持っていると考えている。
今回の調査結果を踏まえ、マイクロソフトとIDCは、テクノロジによる組織のレジリエンス強化、人の能力やスキルへの投資、データを活用した競争力の強化、プロセスの再設計による、継続的なイノベーションの促進が必要だと提言している。
日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 榊原彰氏は、「現在、いろいろな団体、個人がコロナに対応しようとしている。われわれは、クラウドやITをうまく活用していうる企業は回復力が高いと考えている。回復力には、3つのフェーズがある。Response(緊急な状況への対応)、Recover(前の生活にもどる)、Reimagine(ニューノーマルに慣れていく段階)だ。マイクロソフトは、デジタル世界のファーストレスポンダーとして、多くの企業をサポートしてきた。コロナでDXが加速したという人がいるが、DXはあくまで手段なので、重要なのは、目的に向かってトランスフォーメーションしていくことだ。私たちは、それにはテックインテンシティ(テクノロジーへの強度)を高めていくいことだと考えている。そのためには、最新の技術をいかに早く適用して、トランスフォーメーションを進めていくかというスピードと、テクノロジーの選択肢を増やしていくことが重要で、それらの技術にはプライバシー、セキュアといった信頼できる要素が必要不可欠だ」と解説した。
また、IDC Japan リサーチバイスプレジデント 寄藤幸治氏は、「イノベーションの文化を組織の中につくっていくためには、テクノロジー、プロセス、人材、データの4つを変革していく必要がある。言い換えれば、ビジネスモデルそのものを変えていくことだ。DXはデータの活用に尽きる」と語った。
マイクロソフトではこの結果を踏まえ、日本のDXを推進するためには、デジタル人材を育成していく必要があると考え、就労支援に向けたデジタルスキルの習得支援施策「グローバル スキル イニシアチブ ジャパン(Global Skills Initiative-Japan、以下 GSI-J)」を12月15日から開始する。
GSI-Jでは、Microsoft Learnと組み合わせ、ソフトウェア開発やグラフィックデザイン、ソーシャルメディアマーケティングなどの仕事に就くためのスキルを習得できる日本語のオンライントレーニングを無償提供。
また、認定NPO法人育て上げネットと連携して実施したオンラインでの就労支援から得たノウハウを、本施策に賛同する企業やNPOと連携して、オンライン講座などの提供に活用する。
さらに、学生向けにデッセイコミュニケーションズとのパートナーシップのもと、クラウドおよびAIのトレーニングや資格試験を展開するという。