シリコンウェハ業界第3位の台湾GlobalWafersが12月10日付で、同業4位の独Siltronicを買収することで両社が正式に合意したことを発表した。
GlobalWafersはこの発表と同時に、Siltronicの最大株主である独Wacker Chemieが、GlobalWafersとの間に、公開買収期間中に保有するすべてのSiltronic株式を売却する取消不可能契約に署名したことも明らかにしている。
買収金額は約37億5000万ユーロ。12月内に株式公開買い付け(TOB)を実施し、2021年下半期に買収を完了する計画。買収にあたって、野村證券がGlobalWafersの専属ファイナンシャル・アドバイザーを務めている。
GlobalWafersによると、同社はSiltronicに対して以下の3点を約束しているという。
- Siltronicの主要なR&Dセンターとして、ドイツのBurghausenにある生産拠点を維持する
- Siltronicの既存のウェハ生産ラインをサポートするのに十分な資本支出を行う
- 西暦2024年末まではドイツにあるSiltronicの拠点の人員削減または閉鎖は行わない
GlobalWafersの会長兼最高経営責任者(CEO)であるXu Xiulan氏は 「この取引は、世界中のすべての半導体顧客に安定的に技術的に最先端の製品ラインを提供することを目的としたもの。両社の補完的な技術とリソースを統合し、より効果的に生産能力を拡大することが可能となる。SiltronicはGlobalWafersに比べGaNなどの第3世代半導体素材の開発が進んでおり、買収によってそれらの生産能力が大きく拡大することとなり、シリコン以外の顧客ニーズにも十分に応えられるようになる」と語っている。
取り残された業界5位のSK Siltronはどう動く?
業界3位と4位の合併は、シリコンウェハ業界トップの信越半導体(2019年市場シェア32%)に次ぐ第2位のシリコンウェハメーカー(市場シェア予測30%)を誕生させることとなる。トップの信越半導体との差はわずか2ポイント。2020年の市場シェアはまだ出ていないが、GlobalWafersは韓国で300mmウェハの増産を始めており、状況次第ではいきなりトップに躍り出てくる可能性がある。
これまで、GlabalWafers、Siltronicともに市場シェアは単独では10%台で同5位のSK Slitron(同じく10%台)を含め、第3グループを形成していたが、今回の合併により、シェア30%前後のトップグループ3社(信越半導体、GlobalWafers+Siltronic、SUMCO)と、唯一10%台に取り残されるSK Slitronという構図が形成されることとなる。
なお、SKグループ全体としては、12月の役員人事でSK Hynixの半導体技術に詳しい役員を技術担当副社長としてSK Siltronに送り込み、SK SiltronとSK Hynixの技術的連携を強化しようとしている模様である。SKグループは、車載バッテリメーカーであるSK Innovationを所有しており、グループ内に電気自動車関連のエコシステムを構築しようという動きもあり、半導体としてはSiCに注力しようという動きを見せている。実際、SK Siltronも米DupontのSiCウエハ事業を買収しており、シリコンウェハでの競争をあきらめ、SiCのような次世代半導体素材に注力するのか、ウェハ業界再編の最後のピースの動きに注目が集まる。