韓国の半導体・ディスプレイ向け化学薬液メーカーであるRam Technologyが、韓国・唐津市にある石門国家産業団地に新工場を建設し、半導体用フッ化水素の年間生産量を現状の6倍に増やす計画を明らかにした。
半導体用フッ化水素は2019年7月より、日本政府が実施した韓国への輸出管理厳格化の対象となった素材3品目の1つで、主に半導体製造工程において素子形成に用いられるエッチングプロセスで利用されている。
Ram Technologyの新工場は敷地面積2万3948m2を有し、2022年上半期の完成を目指すという。新工場が稼働すると、同社のフッ化水素酸(フッ化水素の液体状製品)の生産量は現在の月産2100トン規模から月産1万3000トン規模へと引き上げられる見通しで、同社は、半導体素材を国産化するという韓国政府の方針もあるが、第一に今後、顧客からのフッ化水素に対する需要が増加することが見込まれ、その需要に対応するために増産を決めたとしている。
すでに韓国ではSoulbrainが、2019年にフッ化水素酸の生産を行う新工場を建設、SamsungやSK Hynixなどに納入しているが、SoulbrainにはSamsungの資本が入っていることもあり、Samsungへの優先的な納入を恐れたSK HynixがRam Technologyにフッ化水素酸の増産を要請していた模様で、今回の動きは、それに応じた結果のようである。
さらにフッ化水素酸を手掛けている韓ENF Technologyも、半導体用フッ化水素酸の増産に向け、348億ウオンを投じ、2022年4月末までに韓国・天安市の工場に新規設備を投入する計画を打ち出している。同社はこれまで森田化学からフッ化水素を輸入し、そこから半導体プロセス用エッチング液を作りSamsungやSK Hynixに供給してきたとされている。
同社は、日本政府による輸出管理厳格化を受けて以降は、フッ化水素を台湾や中国から輸入するなど、仕入先の多角化を図ってきたほか、韓国内に森田化学との合弁会社FEM Technologyも有している。
加えてSKグループの化学薬品メーカーであるSK Materialsも半導体製造用フッ化水素(ガス状製品)の国産化に成功したとしており、現在、量産の準備を進めているという。
韓国の半導体業界の動向に詳しい関係者によると、こうした韓国素材メーカーがフッ化水素関連薬液やガスの国産化と増産を進めていけば、日本からフッ化水素を輸入する必要はなくなるのではないかという期待感が現地にはあるという。一方、官報に掲載された森田化学の2020年6月期末(第83期)の決算公告のように、2019年度の純利益が前年度比9割減となってしまった日本の素材メーカーもおり、今後、日本のフッ化水素メーカーがどのようにビジネスを立て直していくかが注目される。