Intelは12月3日(米国時間)に行われた自社イベント「Intel Labs Day」にて、第2世代の極低温量子制御チップ「Horse Ridge II」を発表した。同社はこの発表が、量子コンピューティングのハードルの1つである“拡張性”の課題解決に向けての前進につながるとしている。
従来の量子システムは、絶対零度に近い温度に保つことのできる希釈冷凍機内に格納された量子ビットチップを、室温での稼働が可能な周辺機器と多数の同軸ケーブルでつなぐ必要があった。そのため、希釈冷凍機や多数のワイヤーなどの物理的な大きさや、コスト、消費電力、冷凍機の熱負荷の問題で量子ビット数の拡張が難しかったという。
2019年に発表された「Horse Ridge I」は、周辺機器や数千本のワイヤーをSoCに置き換えることで、物理的なスペースのほか、システム設計を簡素化し、信号処理技術を使用してセットアップ時間の短縮につながることや、量子ビット性能を向上させることでより大きな量子ビット数への拡張を効率化することにつながるとして発表された。
「Horse Ridge II」は2019年に発表された第1世代Horse RidgeのSoC性能をベースに、量子ビットの状態を操作して読み取る機能や、複数の量子ビットを重ね合わせる際に必要な複数のゲートの電位を制御する機能が新しく追加されたという。
同製品は、Intel 22nm low-power FinFETテクノロジー(22FFL)を使用して実装されており、その機能は4Kで検証済みだとしている。
従来の量子システムの多くは、絶対零度に限りなく近い温度範囲でしか動作できないが、同社が研究している手法であるシリコンスピン量子ビットの場合、1K以上の温度でも動作することができる特性を持っていることから、同社では量子システムを冷却する際の課題を軽減することにつながるとの期待を示している。