SEMIは12月10日、SEMICON Japan 2020 Virtualの開催に併せる形で2020年末の半導体製造装置市場予測を発表した。

それによると、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大により、各国の経済が停滞しているが、第3四半期になり、徐々に回復の兆しを見せ始めており、製造業の景況指数であるPMI(Purchasing Manager's Index)は7月以降、回復傾向を示し、11月は2020年でもっとも高い数値を示すなど、世界経済全体で回復傾向がみられるようになってきたという。

世界的なデジタル化に後押しされて成長する半導体産業

こうした世界の経済状況の中において、半導体市場全体も2020年は1桁半ばの成長が見込まれている。中でもファウンドリ業界に限ってみれば、前年比20%強の成長が見込まれており、こうした強い需要の高まりは2021年も継続することが期待されるという。

また、メモリ産業もサーバ関連の需要が上半期、特に強かったほか、下期はモバイルDRAM関連が従来予測よりも好調となっており、5Gの普及が加速する2021年はさらに伸びる見通しだという。

好調な半導体産業の恩恵を受ける製造装置産業

こうした半導体市場の好調を受け、製造装置、材料市場も好調な動きを見せている。ウェハプロセス処理装置、設備装置、マスク/レチクル製造装置を含むウェハファブ装置市場は、同15%増の594億ドルに達すると予測され、2021年も同4%増、2022年も同6%増と成長が続く見込みとなっている。中でも前工程ファブ装置市場の約半分を占めるファウンドリとロジック分野は、先端プロセスへの投資が顕著で、同10%台半ばの増加となり300億ドルに達する見込みだという。また、製品セグメント別に見るとNAND分野が2020年でもっとも高い成長率を示すことが予測され、その成長率は前年比30%増の140億ドルと、その投資額は最大市場であるDRAMを上回り、今後も続くことが見込まれるという。一方のDRAM市場も2021年には10%台後半の成長率となり、2022年も似たような傾向が続くとみられるという。

  • 半導体製造装置市場予測
  • 半導体製造装置市場予測
  • ウェハファブ装置市場の推移とデバイス別で見た市場の推移予測 (資料提供:SEMI)

後工程となる組み立ておよびパッケージング装置市場は先進パッケージング・アプリケーションにけん引され、2020年は同20%増の35億ドル、2021年も同8%増、2022年も同5%増と成長が続くと予測している。さらに半導体テスト装置市場も5GならびにHPC分野からの需要が強かったことから、2020年で同20%増の60億ドルとなる見込みのほか、2021年と2022年も成長が持続することが予測されている。

  • 半導体製造装置市場予測

    組み立ておよびパッケージング装置市場の推移予測 (資料提供:SEMI)

前工程ならびに後工程を併せた半導体製造装置市場全体としては、従前の予測では650億ドルであったが、そこからさらに上積みされる形で同15.6%増の689億ドルと増額。過去最高額を3年連続で更新することとなるとしている。また、デジタル化の世界的な流れに後押しされる形で、設備投資は先端プロセスを中心に継続して進められることから、SEMIでは2021年に719億ドルと史上初めて700億ドルを突破し、2022年にはさらに伸長し761億ドルに到達するとの見方を示している。

国・地域別の動きとしては、2020年は中国市場が堅調に推移。その額は181億ドルで、初めて最大の市場へと躍り出ることとなる。2位は2019年トップの台湾で、168億ドル、3位は前年も3位の韓国で157億ドルと予測されている。また、2021年以降も中国は台湾、韓国と並ぶトップクラスの設備投資が期待されているが、米国政府による輸出規制が続いており、今後の不透明性はぬぐえないことから、その投資の勢いが鈍化する可能性があることに注意する必要があるという。

  • 半導体製造装置市場予測

    半導体製造地市場の国・地域別推移予測 (資料提供:SEMI)

材料市場も好調に推移

一方の半導体材料市場も半導体市場の成長に併せて堅調に成長していくことが予測されている。2020年は前年比2%増の540億ドル、さらに2021年は560億ドルを超え、過去最高額を更新する見通しだとするほか、2022年も590億ドルと過去最高を更新し続ける見通しだという。

  • 半導体製造装置市場予測

    半導体材料市場全体の推移予測 (資料提供:SEMI)

その最大市場はウェハだが、半導体需要の高まりに併せて出荷数量が伸びている。すべての口径を併せた出荷数の伸びは2020年で前年比2.4%増、300mmウェハのみで見た場合同6.5%増となるという。ただし、価格は軟化を続けており、同1%減となる見込みだが、2021年、2022年にかけては台湾のGlobal Wafers(GW)がドイツのSiltronicを買収することで供給安定化につながるとの見方から、出荷数量、売上高ともに回復することが期待されるとしている。

  • 半導体製造装置市場予測
  • 半導体製造装置市場予測
  • 半導体を材料別に見た市場推移予測(資料提供:SEMI)

懸念点は米中貿易摩擦と新型コロナ

SEMIでは、世界的なデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きはアフターコロナの時代でもキーワードになると見ており、半導体活用の推進役となると見ている。ただし懸念点もあり、そのうちの1つが新型コロナの再度の世界的な感染拡大。これにより、各国は外出制限などを再び行うようになっており、経済の回復が遅れる懸念があるという。

もう1つは米中を中心とした貿易摩擦が続いていること。特にSMICが米国政府の規制対象とされたことは、中国での半導体製造装置の新規発注に影響をおよぼす可能性が高いとする。ただし、米国以外の装置メーカーにとってはチャンスとなる可能性もあり、この問題の具体的な影響がどのようにどこにでてくるのかは、SEMIも現在、調査を進めている段階だとしており、米国の政権交代がなされても、不透明性はすぐには消えず、場合によっては数年間のスパンで影響をもたらす可能性があるとしている。

なお、そうした不透明な市場の中にあって、SEMIではデータセンター、HPC、AIが半導体の重要なけん引役になるとするほか、それに付随する形でラップトップやサーバ、5G関連といった市場が堅調な需要に支えられ、成長が続くことが期待されるとしている。