SAPジャパンはこのほど、中堅・中小企業向けビジネス戦略に関する説明会を開催した。説明は、バイスプレジデント ゼネラルビジネス統括本部 事業統括本部長 藤井善豪氏が行った。
藤井氏は、「日本の生産年齢人口は急激に減少する見込みといわれており、労働人口の減少が社会課題となっている。しかし、これは中堅・中小企業にとってはチャンスと言える。中堅・中小企業が生産性を上げるには、デジタル活用が必須となる。成功している企業に共通している点は、経営者が殻を破ることにコミットしていることだ」と語った。
SAPのERPを導入するプロジェクトのコストは数億円ともいわれることから、同社の顧客は大企業がメインと思われがちだが、藤井氏は中堅・中小企業向けビジネスのファクトシートを示し、「当社のお客さまの8割は中堅・中小企業」と述べた。
SAPでは、中堅・中小企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するため、「新規エコシステムの拡大」「デジタルマーケティングの推進」「デジタル基盤としてのクラウドERPの推進」に注力する。説明会では、エコシステムの紹介が行われた。
エコシステムに関しては、以下の施策を進めるという。
- 業界トップ企業をパートナーにその業界の中小企業向けのエコシステムを構築・展開(年商100 億円以下の企業対象)
- インテリジェントエンタープライズ標準ソリューションモデル( i ESM) の中堅企業への本格展開(年商100億円以上1000億円以下の企業対象)
- パートナー育成:生産性の高い導入モデルへの転換、 デジタル人材の育成
来年1月付けで、中堅・中小企業ビジネスに関する組織体制を刷新する。大きくは売上高1000億円以下、100億円以下の2つに分けて、チームを作る。藤井氏は「売上高100億円以下の中小企業向けチームは、われわれにとって大きなチャレンジ」と語った。
新たなエコシステムとしては、各業界トップの顧客をパートナーに据えて、その業界の中小企業向けのエコシステムの構築を目指す。これにより、業界ごとにエコシステムを構築してプラットフォームビジネスを進め、中堅・中小企業のデジタルトランスフォーメーションを支援することを狙っている。
藤井氏は「われわれの強みは2つある。1つは、さまざまな業種・業界について知見と経験を持っており、支援してきた実績がある。各業界のプロセスをITに落とし込んで、レゴのように組み合わせて提供することができる。もう1つの強みは、各業界のリーダーが基幹システムにSAPを利用していることだ」と語った。
こうした新規エコシステムの構築は、既に建設業界で行われている。2017年にNTTドコモ、コマツ、オプティムの4社で「ランドログ」という合弁会社を設立し、建設業界向けのプラットフォームビジネスをスタートした。この3年間の活動の中で、「まだ足りないものがある」として、今年、中小・中堅建設企業向けクラウド型のERP「ランドログERP」をリリースした。
また、中堅企業に提供していく「Intelligent Enterprise Solution Model」については、「SAP S/4 HANA」をベースに構築したデジタル基盤を提供する。S/4 HANAにはインテリジェント機能が搭載されており、業務の自動化を実現する。藤井氏は「自動化された仕組みを使うのはあくまでも人間。デジタルトランスフォーメーションを進めていくにあたり、自動化された仕組みの中で、人間がどのような役割を果たすかが重要になる」と述べた。
今年6月には「Intelligent Enterprise Solution Model」の本格展開に向けて、業種別テンプレートの提供を開始した。「Intelligent Enterprise Solution Model」を発表した際、そのパートナー企業は3社だったが、現在は10社に増えており、各社からテンプレートも提供されているという。