NXP Semiconductorsは12月7日(オランダ時間)、車載向けの新しいレーダーソリューションを発表した。これに関してNXPジャパンより説明会がオンラインで開催されたので、この内容をお届けしたい。
今回の製品の背景にあるのは、今後急速に自動車にレーダーが装着されるとみられている事にある(Photo01)。
もともと事故防止や死亡事故低減に向けて新車に様々な安全装備を増やす方向にあるのはご存じの通りであり、それもあって車載用レーダーの市場は今後3倍の速度で成長するとみられている(Photo02)。
ちなみにまずは前方レーダー、次いで全周をカバーするコーナーレーダーとなり、最終的には4Dレーダー(3次元+時間で、対象物を点群として捉えて補足追跡するレーダー)を利用したイメージングレーダーが視野に入っているとする。
こうした成長の見込めるマーケットに向けて、NXPが今回発表したのがレーダートランシーバの「TFE8x」と、レーダープロセッサ2製品である(Photo03)。
これを組み合わせる事で、長距離レーダーやコーナーレーダー、イメージングレーダーまでが全部カバーできるという話だ(Photo04)。ちなみにローエンドからハイエンドでは、性能が6~50倍ほどスケールする、とされる。
さて実際の製品であるが、レーダートランシーバは共通の「TEF82xx」で、これは先ほども出てきたが最大4つまでカスケード接続が可能である。これに組み合わせるデジタルバックエンド向けに、「S32R29x」と「S32R45」という2種類のプロセッサが用意される。まずTEF82xxであるが、これは受信×4・送信×3のMIMOサポートを内蔵したAFEである。対応するのは77GHz帯だが、最大4GHzの帯域を利用可能とされる(Photo06)。
次いでハイエンド側のレーダープロセッサである「S32R45」(Photo07)であるが、ハイエンドだけあって機能がフル実装である。
ここでLAX(Linear Argebra Accelerator:線形代数アクセラレータ)とあるのは、4Dレーダーを利用してのDoA(Direction of Arrival:到来方向推定)を計算するためのもので、これ単体で300GFlopsの演算性能を持つ。全体の構成はPhoto08の様になっており、かなり重装備のプロセッサとなっている。
一方ローエンドのレーダープロセッサである「S32R294」は、より単純なレーダーに向けたもう少しシンプルな構成である(Photo09)。
こちらは低コストを狙ったためか、PowerPCベースのe200コアベースの製品である(Photo10)。
これらの製品を利用するとどんなことができるのか? という実例であるが、まずS32R45の場合は先ほどからも出てきた4D Imaging Raderを容易に構成でき、またFPGAよりも低消費電力・低コストで実現できる点を売りとしている(Photo11)。
一方フロントレーダー(Photo12)とかコーナーレーダー(Photo13)は、到達距離や精度こそ求められるものの、4D Image Raderほど複雑な後処理は必要ないため、S32R294で十分という訳だ。
ここで出てくるNCAPは、自動車アセスメント団体のEuro NCAPの事であるが、そのNCAPは2022年以降のアセスメント評価に合流点/交差点対応のAEB(Autonomous Emergency Braking:衝突被害軽減ブレーキ)や対向車正面対応のAEB、自動緊急操舵、歩行者・サイクリスト保護のサブシステム改訂、緊急時の路肩寄せ・安全確保、子供の存在検知といった項目を追加することを明らかにしている。そこで、合流点/交差点における対向車検知や歩行者・サイクリスト検知などを自動車全周にわたって実施する必要が出てくる。ただ当然ながらコストを抑えつつこれを実現する必要があり、そうした用途には(邪推すればArmにライセンスフィーを払わずに済む)PowerPCベースのS32R294を利用することで実現できる、としている。
今回発表の3製品はすでにサンプルおよび評価キットを出荷中である。量産開始は2021年を予定、とのことであった。